また明日な
あの手をずっと握っていられると思っていた。やっと花火の季節が来たんだ、この季節のために俺は柄にもなく雑誌を読みあさって パソコンと何時間もにらめっこして 笑われるの覚悟で色んな奴等から話を聞いた
あいつには夏が良く似合うと思った。青い空の色とか、白い雲の色とか、空に向かって伸びる黄色の花の色とか。 だから一緒に過ごす夏は俺にとって過ぎ去っていくものじゃなくて しっかり肌で感じて大切にしたかったんだ。 ‥何て言うか、宝物みたいにさ
俺らしくねえってテメェは笑うかもな
そんなの俺だってわかってる。
けど、この気持ちに嘘はなかったんだ。
‥俺は千愛が好きだ
Re:うん、またね
ずっと手を握ってられると思ってた。始めの頃は付き合っていても彼が何を考えてるとかわかんなくて一緒に居ても笑っててもどこかで怖がってたり、距離を取ってしまうこともあったの。
だけど、本当の彼はすごく不器用で言葉も態度も上手く伝えられないからって私と別れようとしたこともあるのよ!笑っちゃうよね、お互い怖がっちゃうんだもん
‥でもね 私を本当に大切にしてくれた。
言葉なんかなくても握ってくれた手がすっごく温かくて、それだけで彼を感じていられた
こんなこと彼に恥ずかしくて言えないけど
私、隼人が好き
「‥もう、行くのか?」
「うん。…もうすぐ時間だから」
蝉の声が遠くで響く気がした。バスの中の乗客は決して多いとは言えないくらいで、それぞれが音楽を聞いたり話をしたりと時間を楽しんでいた。 俺はずっと流れていく風景をぼんやり眼で追っていた。
相変わらず空の色は綺麗な青で、バスは遠くで咲いた向日葵を 静かに追い抜き走っていく
「‥」
(俺たちは不器用で)
次のバス停が見えてきて 千愛の横顔を覗いた。
(ずっとどこかで素直になれなくて)
バスが停車し、ドアが開いた。動く気配がない乗客の中から ひとり隣に座っていた彼女が静かに立ち上がった
「‥隼人」
「‥‥」
視線が絡む。久しぶりに見た彼女の眼が綺麗で、本当に綺麗すぎて 俺は微かに反らしてしまい、その瞬間に胸の底からざわざわと何かが立ち込める
「‥っ」
「‥隼人、またね」
彼女は小さく ちいさく微笑むと、
ゆっくり歩き出し バスから降りた
Re:Re:さよなら
(またねなんて) (来ないのはわかってた)
向日葵は眩しすぎて 俺にはどうすることも出来なくて
「…わりぃ」
そして俺らは、別れた。
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