やわらかな風が吹く土曜日の午後



私は絶え間なく繰り返される合い言葉をただ永遠と繰り返していた。


かれこれもう30分は続いている。ポカポカな日差しを浴びながらお昼寝したいんだからいい加減あきらめて欲しいんですけど、…まだ我らがボスは往生際が悪いらしい




「あのー‥ボス。もうやめませんか?もうボスが弱い事は十分わかりましたから」


「いや!もうちょっと続けようよ次は勝てる気がするから」




絶対に次は千愛あれを出すと思うんだ!そう笑うボスはどこから来る自信なのか それとも得意の超直感というやつか。


はあ、と相づちを打ち無邪気に笑う彼の背後で輝く太陽をカーテン越しにぼんやり眺めた




(マフィアのボスと部下がこんな天気がいい日に部屋で遊んでるなんて平和ですねー。)





「そんな心ここに在らずみたいな表情だすなよ‥。」

「あっバレちゃいました?」



アホっぽいからやめなさい、と子供に叱るみたいに頭をポンと叩かれて思わず唸り声が出た。

こんな時にも可愛く反応できたら女の質も上がるだろうに。私にすればレベルがまだ足りないみたいだ




「千愛はわがままだから仕方がないなあ。…じゃあ次で最後だから。負けたら言うこと訊いてね」





せーのっ。

ジャーン ケーン





「ちょっ…、ボス!」


セコい!と抗議を投げ掛ける前に始まってしまった合い言葉。どんだけ勝ちたいんだこの人!





ポン!





「…あ」



まずい。
負けた




でも本当の戦いはこれから。

ボスはここからが極端に弱い。だって指差す方向と逆の方向に一度揺れてから差す癖があるから



(また私の勝ちでしょ)




先の勝利を確信して思わず顔がにやける









[*prev] []
[back]