退屈な授業時間
黒板に書かれる文字がわかりずらいなー。通称おじいちゃん先生の授業は分かりやすいようで私には全然わからない。

とりあえず「重要!」と言われた所にマーカーをつける。何で重要なのかは花ちゃんにでも後で聞こうっと



「先生ーすいません。保健室行ってきます」



教室に響いた聞き覚えのある声。
振り返れば武が教室を出ていった。隣にいたツナは目を泳がせていて、状況についていけてないみたい





(あっ 武…)


心の中で名前を呼んだ。
声は届くことなく、教室の扉は静かに閉まった












「あーやっと1日終わったぁ!」

「ふふっ千愛ちゃんお疲れさま」


机の上に両腕を伸ばしてうなだれる。隣の席の京子ちゃんは可笑しそうに微笑みながら教科書を鞄に積めた



「山本くん戻ってこなかったね」

「うん、そうだね‥」


「千愛ちゃん何か知ってる?」京子ちゃんは心配そうに表情を曇らせるけど 私は首を横に振った。



教室から見える空は昼頃から雲行きが怪しくなり 帰る頃には雨が降りだした




「山本くん最近元気なかったよね。体調悪いのかな‥」

「‥ごめんね。あたしわかんない」






何も武のこと、知らない。わからない。

今まで当たり前みたいに遊んで、笑って、喧嘩して 2人でいたのに、

これからもずっとこのままだと

思ってたのに。






「俺、千愛のこと好きだ」







振りほどけなかった力、何かに祈るような すがるような瞳



あんな武 知らない。






「あたし、怖いんだ」


「え?」



「武のこと。もう今までみたいに一緒に居られない気がして」



後戻りできない気がして
気づけば手を振りほどいていた



武を 傷つけた


あたしが、傷つけた



(あんな顔の武、初めて見た)






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