「最近どう?」

そんなこと聴かれても今の気持ちを言葉で説明するにはとても曖昧すぎる。


誰かは淋しいと言うだろうし悲しいと言うだろう



でもこれが俺にも当てはまるかといえばきっとそうでもない。




曖昧。そして戸惑い。






ああ、空を見上げれば飛行機雲



「見つけるのが上手くなったのなー」









下を向かないのは きっと俺の性格だ。












「おはよーツナに獄寺!」

「あっ、おはよー千愛ちゃん」

「おう」



あれからツナと千愛は何事もなかったようにいつも通り

そして


「武もおはよ」

「ああ。おはよー」




俺と千愛もいつも通りだった

あの日から千愛は目を腫らせて学校にくることもあったけど今はそういう事もなくなりまた前みたいに笑うようになった


そういえば最近特に笹川が千愛に話しかけてよく一緒に帰るのを見かけた。もしかしたら慰めてくれてたのかもしれない



俺も状況が状況だっただけに勢いに任せて千愛に告白しちまったから慰める側に立つことができなかった



人が聞いたらずるいって言うかもしれないけど


人の感情なんて誰かが止められるもんでもないのな


俺が望んだ結果だ
きっと後悔なんかしない







「おはよう千愛ちゃん!最初の授業は移動だよ」

「あ!京子ちゃん待ってよー」




(あっ‥やべ、いっちまう)



よしっ、覚悟決めた!!






「千愛!」

「うん?なーに武」


「あのさ、俺」






俺達に気を止めない外の声がやけにざわざわ聞こえる

それが何故か急かされてる気がして目が回った






「‥‥はは、」







(‥あー言葉が出てこないのな)


煮え切らない自分自身がはがゆくて どうしても、上手く言えない




(さっきの勢い何だったのな…カッコ悪)




心が はがゆい





「っ‥」



「用ないなら先行くからね」

「‥あっ!ちょっと待てって」




ここで言えなかったらなんか上手く言えねーけど、ダメな気がする






「千愛!」

「…やっ」



音と共に痛みが走った




「あ‥ごめ ん。先、行くから」




弾かれた手が行き場を失って 少しヒリヒリした









「‥‥はは、まいったのな」



俺は立ち尽くしたまま 瞳だけが千愛の後を追いかけた





俺が望んだ結果だ
きっと後悔なんかしない




この手をすり抜ける


伸ばした指の先に触れられそうで触れられない距離


きっとこれを「せつなさ」と呼ぶんだろうな






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