今日は朝から目覚めが悪かった。







体が重く 朝を知らせるベルを止める動作さえもが億劫だったが、学校へ行かなくてはいけない。何か違和感を覚えながらもしぶしぶ身体を起こし準備を始めた










「武は、今気になる人とかいないの?」



(あの時からなんか変だ)






あんなに浮かれていたはずなのに、





「俺って…意外に打たれ弱いのな」






ダメージはでかいようだと自分自身に苦笑いを贈り
重たい足で学校へ向かった












「じゃーな!山本」

「おう!また明日な」


「早く部活行かねえと顧問が待ってるぞー」

「そりゃヤバいな!アハハ サンキュー」





「‥‥‥‥」



手を振る友達が教室を後にするのを見送り、振り返した手を下ろす

いつの間にかオレンジ色に染まりつつある教室



放課後になっても気分は浮上することなく、待ちにまった野球の時間も 残り時間が刻一刻と過ぎていく


それでも俺の足はグラウンドに向かうことを拒み ぼんやりと自分の席の机に座りながら千愛の席を眺めた







「‥‥俺はどうしたいんだろう」





自分の想いを伝えたいのか

このままの関係を望むのか








「おい、山本」




呼ばれた声に視線を向ければ 入口で煙草を吸っている銀髪のあいつが居た。あいつがまだ帰ってないなんて珍しい、


ってか





「おいおいここで煙草はマズイだろ」




屋上ならまだしもここは校内、しかも教室。風紀委員にバレれば即 雲雀さんの餌食だろう






「…今イライラしてんだ。たまには見逃せ」






そう言いながらも口に含んだ煙を吐き出し 煙草を消す



(ああ あいつ携帯灰皿なんて持ってたのな。)
見かけによらず獄寺はエコな男だと感心した







「ツナはどうしたんだ?」





獄寺がツナと一緒じゃないなんて珍しい。先にツナが帰ったのか?それとも









「十代目は、…千愛と一緒だ」



「‥‥そっか。」







(あぁ こうしている間にも 状況は俺を待ってくれる訳もなく変わっていくのな)






リセット出来ない時間を 今俺は上手く過ごせているだろうか







「山本は、どうしたいんだ?」



眉間にシワを寄せながらも眼差しは真剣で 俺を捕えて離さない



瞳は怒りや同情に染まる訳じゃなく

ただまっすぐに







「俺にも‥わかんねぇや。自分のことなのにな」






明日、5年後 10年後の俺は

今を後悔するだろうか





逃げようとする俺を笑うだろうか

それとも俺を責めるだろうか








「1つ言っとく…現状維持なんて甘い言葉は存在しねぇ。」



「これ以上俺をイライラさせんな」









俺は今どうしたい?





「俺、は」





言葉よりも先に 脚が走り出した





例え後悔したとしても
君との明日を変えたくて







「獄寺、サンキューな」






なんでもお見通しなあいつに感謝

きっと面と向かって言ったら「ああ?」とか言って照れんだろうな





素直に なるために

ただ 俺は走り出した







君に会いたくて、



君に会うために。






どっちかなんて


(そんな選択肢、始めから必要なかったのな)




辿り着いた先の君が
どうか笑っていますように




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