「武は、今気になる人とかいないの?」




ドキリ。
千愛の何気ない言葉に心臓が高鳴り 耳に熱がこもるのが自分でもわかる



「どうかしたのか?…急に」

「なんか気になっちゃって!」


部活のユニフォームを脱ぎながらチラリと千愛を覗き見る。 水場でプラスチックのコップを片付けてる為目線こそ合わないが 横顔から見える頬は微かに赤い




(これはもしかして)






小さな期待を胸に、脱ぎ捨てたユニフォームを愛用のバッグに詰め込んだ





「…千愛はどうなんだ?」

「えっ!?あたし…あっ!」


こちらに振り返った拍子に並べたコップに肘があたりガラガラと音をたてて崩れ落ちた



「わーごめん武」
「ははっ、いいからいいから」


髪を耳にかけ直しコップを慌てて拾い上げる千愛と一緒になって拾い集める






(この反応は、いい感じじゃないのか?)







不意に千愛のコップを集める手が止まる。俺は目を向ければ いつの間にかお互いの距離が近いことに気づいた

同時に視線が重なる







その眼は真剣そのもので









「相談、なんだけど」



「…どした?」




「もし、…告白されるなら なんて言われたい?」



「…なんか生々しいのな」
「いいから早く答えて」







ヤバい。心臓がバクバクする
こんなでかい音 聞こえてるんじゃないだろうかと心配になった




「ストレートに好きとか。」

「…うんうん」

「大好きとか。」

「うーん…ってほぼ同じだよ」



「でも、好きじゃ足りないなら」


「…うん」





愛してるとか











言葉を言わなかった訳じゃない





言おうと口を開いた先の君は






「あっ!山本と千愛…ちゃん」

「てめぇら部活は終わったのか?」




「うん、もうすぐ終わるよー!」



ちょっと待ってと話す千愛は 俺が見たことない笑顔を咲かせて






俺は目を奪われた、けど

君の、目を奪ったのは









愛してるなんて





その言葉の延長線に君は確かに存在するのに




君の延長線上に、俺は居なかった






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