「あっ…、ごめんね。弱音みたいなこと言って」



「ううん、そんなことない!‥逆に嬉しいの。いろんなこと話してくれて。」



ツナくんの話聞いた時はビックリしちゃったけどね!にこにこ笑う京子ちゃんの表情を見たら、安堵の息が漏れる





「ツナはなんていうか‥初恋って気がするんだ」

「そうなんだ」

「小さい頃によく遊んだし、助けてくれたり‥」




今のダメツナからじゃ想像できないでしょ。笑うあたしに京子ちゃんは「そんなことないよ」と微笑む



「ツナくんは優しいから。だから千愛ちゃんも好きになったんでしょ」


「‥うん。」




(じゃあ武は?)


心に問いかけるように、ぐるぐる回る。
武はあたしにとってどんな人?




(ああ、そうだ)


いつだって武は私の味方で


傍に居てくれたのは、ずっとあなたで


あたしを呼ぶあなたが

まるで太陽みたいで




あなたの声が
優しさが
笑顔が


あたしは、







「‥‥京子ちゃん、あたし」


「近すぎて見えないこともあるから」


忘れないでね。大切なこと。










「はあ、‥はあ 階段が、き つい」


久しぶりに走ったなあ。
教室を飛び出したら銀髪のあいつがいて、すれ違えば「遅えぞ、バーカ」と急に頭を叩かれた。

もう なによ、何も知らないくせに




ああ、雨の匂いがする。





階段をのぼり重たいドアを開ける。広がる景色は雲に覆われ表情は読めない

ただわかるのは君の背中




そんなとこに居たら風邪引いちゃうよ。





「‥‥‥‥武」




小さく、ちいさく名前を呼ぶ。






「おう」



降りしきる雨の中

振り向いた武は、笑ってた。


雨が洗い流して
くれたらいいのに



(うまく伝わる自信もないけど)

(それでも、)






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