「武〜聞いてよツナがねひどいんだよ!」

「ははっ千愛、ツナがどーした?」


学校の屋上から見える空は晴れ時々曇り



グラウンドを一望出来る景色の中に下校する生徒は居ても スポーツや楽器に向かい合って汗を滲ませる人影は見当たらなかった




扉の向こうから勢い良く現れた女の子はツナの幼なじみ、そして野球部のマネージャー




だけど幼なじみは最近発覚した事実


千愛がツナの隣の家に引っ越しツナのお母さんに会ってなければ

このまま2人の距離は縮まらなかったかもしれない



けど小学生からの付き合いである俺との方が仲が良いというのは周知の事実であった






「ツナが今度の試験で全教科の点数勝負するっていうのー!」

「いいじゃねーか、そんな良くないことかー?」

「だって負けたらランボ君のお守り1週間だよー!?」




この前の夜も急に押し掛けてくるしさー





吹き抜ける風に千愛の黒髪が揺れ 横顔から覗く不機嫌に見える表情も




俺から見ればどこか楽しげに感じる




(この前まではテレビや友達、部活の話が主だったのに)




「ツナの笑顔に裏がありそうに見えて仕方がないよー!」

そう言ってフェンスに背もたれながら笑った






(最近はツナの話ばっかりになったのなー)





徐々に変わり始めた出来事に





胸が疼くのは、気のせいだろうか



「だからね武!これから武の家で勉強会しよっ!」

「いいぜっ! 俺が教えるのか?」

「武はあたしと学力変わんないでしょ!?一緒に勉強してツナにあっと言わせてやるんだから!」


だから、はーやーく帰るよ!

千愛は俺の手をとって立ち上がり また勢い良く階段をかけ降りた


今が幸せなら


このままでもいいって思うことは


そんな悪いことじゃないよな?





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