授業が始まってずいぶんと時間が経った。移動教室で仲の良い者同士で座っているせいか女子のひそひそ話も目立つ。
でもそれや先生の声でさえも今はずっとずっと遠い




するとポトリと置かれたノートの切れ端。中を見たら「どうしたの?」と書かれていて隣で心配そうな眼のツナと視線が合った




「元気ないけど体調でも悪い?」

「‥サンキュー!でも大丈夫なのな。」



ならいいけどと寂しそうに笑うツナに胸が痛む。やべえ心配かけちまったな、ちゃんと真面目に勉強するかと目線を落とせば真っ白なノート


教科書にラインを引こうとペンを走らせれば蛍光色は霞んでいた





「…ツナ悪りぃ、俺今日サボるわ」



「えっ…!ちょ、山本!?」

すいません保健室行ってきます、平然と教室をあとにすると呆然とするツナ



サボっちゃおうと決めた軽い気分な俺は俺に苦笑い。

でもこれで 少しは楽になったのな










「ぬわー」


思わず奇声も出したくなるのな。だって抜けてきたはいいが行く宛がない。屋上はさすがに行く気になれずとぼとぼ辿り着いたのは自分のクラスの教室




当たり前だがガランとして誰も居なかった。隣の教室から聞こえる笑い声を聞き流しながら自分の席に座り教室を眺める



気が沈んでるせいかやたらと広く感じる、そりゃこの教室に40人近くが入ってりゃ元は広いよなー



無駄な事を考えて大きく息を吸って


吐いた。





「‥‥‥」





「あ‥ごめ ん。先、行くから」



俺はあんな顔させるためにあんなことしたのか‥?



不意に今朝の出来事を思いだしてここも居心地が悪くなった






(外の空気でも吸って落ち着こう…ってうわ!?)



ベランダへ続くドアを開ければ予想だにしなかった人の脚があり思いっきり蹴り飛ばしてしまった

それと同時に「痛てえ!」と叫び声が響く




「脚!?‥って獄寺もサボってんのか!ビックリさせんなよー」

「俺は初めから居たっつーの!勝手にビビってんじゃねーよ」



それもそうか!と笑い飛ばせば「馬鹿野郎が」と舌打ちが飛ぶ。ああ、こういう雰囲気は居心地いいなー。



「でも獄寺がサボりで屋上以外の場所にいるなんてあるんだな」

「あー‥今日は、なんとなくだ」



一瞬だけ目を反らすも 獄寺はところでと話題を変えた


「お前千愛とはどうなったんだ?」



「泣かして告って嫌いって言われて避けられた」

「んな!?てめー何やってんだよ‥」



「ははっ、そうだよな!」






「…ほんと。何やってんだろーな」






千愛が手の届かないどっかに行っちまう気がして 焦って 今のままじゃ足りなくて




「欲張りになってたのかもな」





「…でも完全に避けられてる訳じゃねーだろ。挨拶とかはあるし」


「そうだな。でもあんな千愛の辛そうな顔を俺がさせちまってると思うと‥」



突っ走りすぎて相手の事も考えずに 想いだけが増して




「…俺から見ればてめえもだいぶ泣きそうな顔してるけどな」


「ははっ。そりゃまいったな」




悩んで 迷って、
決めた心は傷ついて



それでも千愛と過ごした過去は本物で




こんなにも 好きなのに

「‥嫌いになんて、なれないのな。」






ただ傍にいれればそれでいい

あの純粋な想いはどうして形を変えてしまったんだろう?




これからも千愛や俺自身を傷付ける気持ちなんて、きっとこれ以上持ってちゃいけない




でも



「嫌いになれば楽だけどさ、好きなままでもいいと思うか?」


「‥それは俺が決めることじゃねえだろ」



「獄寺は、どう思う?」




君がまた笑ってくれるように

あの頃の2人にもう一度願いを込めて





「身勝手だろ」


…でもそんぐらいワガママに生きたっていいんじゃねーか?




「ははっ、…サンキュー な」




言葉は奥にしまって

恋心に背を向けて

サヨナラしましょう



「この話はここで終わりな」


曇りだす空に許しを乞いながら


青臭くてかなわねえな、と叶わぬ恋と流れた涙に笑った



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