「なぁー千愛さん今日のオススメはー?」
「んーモンブランかなぁ」
「千愛さんが作ったケーキはいつ売られるんすか?」
「まだお店には並ばないかなあーあはは…」
こんな会話を堂々とレジ横のカウンターで繰り広げてる相手は最近よくお店に買いに来る男の子
ケーキを毎日買いに来るってよっぽど甘いのが好きなのか、それか
「彼女に毎日プレゼントって近頃の子は大変だね。でも甘やかしてばかりじゃダメよ?」
「はははっ千愛さんって面白いのなー!」
今はあまーい片想い中なんすよー
頬杖をつきながらカウンター越しの彼は優しい目と温かい微笑み
本当にその子が好きなんだと彼の事を知らない私でもそれだけは伝わってくる
(なんだ彼女じゃないのか。毎日ニコニコしながらお店に来るからてっきりそうかと思ってたな。)
「じゃあ甘いもの好きなんだねー。ここのケーキは酔っちゃうくらい甘くて美味しいから」
「そうっすねー でも俺…」
千愛さんが作ったケーキが食べたくて毎日通ってんすよ
不敵に笑った彼の顔が今日は赤みがさして見えて
ドキッとしたような気がした
「あ、もうこんな時間なんすね」
時計を見れば17:45 彼はいつも決まって50分になると帰ってしまう
っていうのもそろそろ痺れを切らした店長が睨みを効かせてくるからだけどね
(あと10分だけなのになあ)
「あー…じゃあそろそろ俺、帰りますね。」
顔が赤く染まって可愛い彼を 少し引き止めたくなったのは
「ねえねえ、君名前は?」
「…? 武。山本武」
甘い匂いに惑わされた ただの好奇心か、それとも
退勤時刻は18:00
「武くんかー! じゃああと10分待っててくれたら私が作ったケーキ試食してほしいんだけど、どう?」
赤い顔して慌てて帰ろうとした彼が 立ち止まってにやけた顔を必死で隠したのは数秒後の
また別の話
「なにつくってんすか?」
「デラックスプリンアラモードシュー!」
「シューってついた時点でケーキじゃないのな」
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