「わぁー!雪ですよ雲雀さん!」

「うん そうだね、でも3日前から降ってるじゃない。…もう珍しくないでしょ」


年は越したが季節が変わった訳ではなく
外は道も建物も全て白く飲み込み 冷たい風とともに空からはまだ止みそうもない雪が降り続いていた



「そういえば前にもこんな会話したね」

「あっ雲雀さんあの時の淡い青春時代を覚えてるんですか!?」

「いいや、全く」


いつかの応接室から見えたそれも空から静かに降り続いていた



「そうですね 中学生の時も雲雀さんそんなテンションでぶーぶー言ってまし、…いたっ!?」

言い終わる前に頭に衝撃が走った


「君は今も昔も変わらないね。今の状況でも雪ではしゃげるなんてまだまだ子どもな証拠だよ」


激しくはないが雪は予想以上に降り続いており車は使えず街までの道のりを歩く羽目になっている


(ボスもこんな日に任務(お使い)って容赦ないなー)



雲雀さんはあたしが発狂してこんな日まで外出するのかと罵倒しながらも付いて来てくれていた

ボスのこと言ったら怒るだろうとふんで秘密にしている



「いーじゃないですか!
雪の日に歩いて出かけるなんて滅多に出来ないですよ」


「それに雪ではしゃげないなんて嫌なんですよ
子供の頃は純粋に喜んで走って遊んでたのに、大人なったら寒い 移動手段がない 嫌だ嫌だって…空にも失礼だし、なんだか寂しいじゃないですか」


きっと大人になって いろいろ知りすぎちゃったんですね



「…へえ 千愛にしては珍しい考え方だね。誰かに教わったの?


「えへへ…中学生の時にちょっと」




「群れてる奴が少ないからいいけど 最近の子は寒いからって引きこもりすぎだね」

「だって寒いのは嫌ですもんーでも雪ってテンション上がりますね!」


「もっと小さい子は寒さ関係なしに外で遊んでるっていうのに」


歳を重ねると童心を忘れてしまうんだね


応接室の窓から彼は近くを雪合戦しながら下校する小学生を指差して小さく笑った

でもその横顔は少し寂しそうで



「雲雀さんったら…もう!自分も雪合戦したいなら早く言ってくださいよ!相手しますから」

「噛み殺すよ、君」




いつまでも純粋な眼で世の中を見ていたい

そう教えくれたのはあなただけど

…もう、忘れてしまったかな



「忙しいのもわかりますけど、たまには雲雀さんも雪を楽しみましょ…ってうわ!!?」


飛んできた何かをかわし確認すると、硬く握られた雪の塊

「ってちょっとー!硬く握りすぎですよ!
壁に当たったにも関わらず崩れてないし!?」


前を見れば不敵な笑みを浮かべる彼


「楽しむんでしょ?じゃあ今から千愛はボクの的だから」


歩きながらも鼻唄を歌って雪を集める雲雀さんの姿を見て その貴重な光景に思わず吹き出してしまった



「…とりゃ!」

「!」

「あははっ!雪合戦なんて 雲雀さんおとなげーい!かわいー」

「…噛み殺す」


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