「現状維持なんて俺は嫌だぜ?」

「どーして」


「だって周りも一緒に動いてるんだ、自分がその場から動いてないならそれは後退だと思うのな」

「でも行動を起こして位置が変わらないなら後退じゃないでしょ」

「動いた結果ならそれは前進だぜ!」



ははっと笑う武はいつも変わらぬ笑顔で
どんな時もあたしの側にいてくれる


「…ポジティブ」

「ものは捉えようなのなー」


だからそんな泣くな?そう優しい声で囁きながら私の頭をゆっくり撫でる


「俺は千愛の笑った顔のが好きだぜ」








「うぅ…ありがとう、武」

武は優しいね。涙を拭いながら千愛は少しだけ不器用に笑った



(…俺は本気なんだけどなぁ)

何の感情を抱いてない子の失恋を慰める程、俺はできる男じゃない


ましてや相手はツナだ。
本当はツナも千愛の事が好きなのもわかってる以上、下手に慰めてうまく事が運ぶのも避けたい


(…でも好きな女が泣いてるのを無視できる程、俺は出来ない男じゃないのな)



ツナはきっとマフィアのボスとして先のことも考えての答えだろう。


素直になればいいのに



「…これから何か、変わっていくかもな」


そんなことを考えながら千愛の頭を撫でていたが、ふいに千愛がこちらに向きなおってきた


「ありがとう!武のおかげで元気出た…結果がどうあれ前進したし、これから変わるかもだし!…ね?」


そう言った千愛の表情はさっきと変わって満面の笑みで


やっぱり好きだな と見惚れてしまった




(素直にならなくちゃいけねーのは、俺の方かもな)






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