世界に永遠なんてないって、誰かが言ってた


人の気持ちも 今いる現状も
一秒先には分からないって

だけど2人が愛したことや今まで歩いてきた道は紛れもない事実だから



その事実だけはずっと変わらないものだよねって、

誰かが笑ってた







「綱吉は、永遠なんてあると思う?」



太陽が部屋をオレンジ色に染める頃、2人を繋いだ影を眺めポツリと小さく呟いた。綱吉はこちらを見て一瞬息をひそめたが、ゆっくりと微笑んだ





「んー‥永遠はあるんじゃないかな」


「でも人の気持ちは変わってしまうわ。もしかしたら明日には綱吉のこと嫌いになるかもしれない」



「あはは、それは嫌だなー」

「‥だったら さ、」


綱吉はおどけたように笑った。でも私にはそれさえも辛くて




「だったら明日はどこにも行かないで傍にいて」




明日死ぬかもしれないのに、そんな風に笑わないでよ



「‥‥‥千愛」

「こんなこと言ったら困らせるだけだよね‥ごめんなさい」


綱吉の選択を 背中を、支えてあげたいのに




「でもさすがに‥あんまりだよ」




みんなの大切な人が狙われて、傷ついて



まるでゲームを楽しんでるみたいに笑う人と交渉なんてきっとできない


明日、綱吉は殺される


そんな場所に行くなんて




「隼人も言ってた。‥罠かもしれないって。…すごく危険だって」



「そうかもしれない。けど」
「ねえ 他の方法ないのかな」


このままじゃあなたが傷付くだけじゃない。‥そんなの、嫌だよ





「……千愛、聞いて」

「綱吉がいかなくても、もっと違ったやり方が」




「千愛」



下向きがちだった私の瞳が名前を呼ばれた方にゆっくり見上げると、困らせている状況とは反対に あなたの瞳がとても優しくて




「ありがとう」


心配してくれてるんだね、って‥そんなこと言わないでよ。辛いのはあなたが一番じゃない。




「たしかに相手の言葉に信用はないかもしれない。けど、みんなを守れる可能性があるなら俺は行きたいんだ」


「…それしか方法はないの?」


「…可能性をゼロにしたくないんだ」



‥だから許して欲しいとは言わない。けど 千愛にはずっと笑ってて欲しいかな



それが一番の心の支えだから




「…笑えるかな」


「大丈夫だよ、獄寺くんや山本だっている。‥それに、もしもの時は雲雀さんに頼んであるから」



だからしっかり言うこと聴くんだよ?



「っ‥‥は い」

「ん、いい子 いい子」



大きな掌がふわりと髪を撫でる。その優しい動作が、綱吉をより近くに感じて
あなたの存在を繋ぎとめたくて


困らせるだけとわかっていても

涙が止まらなくなった








こんなに好きなのに、

なんで好きなだけじゃいられないのかな


「綱吉のバカッ…」


「…ごめん」

「 っ、謝らないで」


「‥‥‥‥」

「綱吉」



愛してるから、許してあげる



綱吉のこと 信じてる

だから帰ってきたら、抱きしめてね




「‥小さな希望を繋いでみせるから」



だから今はゆっくりおやすみ、千愛の手のひらに祈りを込めて 小さなキスをした。





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