雨が音を奏でるようにまっすぐな線を引き地面を弾く




朝は晴れてた筈なのに午後から天気が崩れそれからの空模様は曇りそして雨。


昼休みはみんな外に出れないからいつも以上に騒がしかったけど、放課後にもなればそそくさと門をくぐり抜け帰路に着いていた。







「‥沢田くん、雨止みそうもないね」

「そうだね…。俺、傘持ってないんだよね」

「沢田くんも?あはは同じくー」



玄関先に向かえばクラスメイトの男の子。足止めをくらっている彼の横にたどり着けば「まいっちゃった」とおどけたように一線先の景色を指差し力無く微笑む。

雨の音に負けないようにいつもよりずっと近い彼との距離がちらちらと視界に入って落ち着かない


内容のない会話や小さな動作でさえ心臓がバクバクと鳴るのは、きっと気のせいなんかじゃないと思う




「千愛ちゃんも?俺、天気予報見忘れててさー」

「そうなんだ。今日は予報80%だったよ!みんな意外とニュース見てるんだね〜」


しっかりしてるよね。と頷き感心すれば、それを見ていた沢田くんは首を傾げた。



「‥あれ、千愛ちゃん傘持って来なかったの?」




「………、玄関に」


忘れて。

申し訳なさそうに話せば「千愛ちゃんらしいね」と沢田くんは困ったように笑った




あーでも私が持ってたら相合い傘で帰れたのになー、なんて思ってみたり。そんなこと考えたってきっとそんな行動力ないと思うけど。




「俺が傘持ってたら2人で一緒に帰れたのにね」

「えっ!!あっ、そんなこと…えっと」




「ははっ。千愛ちゃん顔真っ赤」



笑い声につられて カアァ、と湯気が出そうなくらい顔がほてるのが自分でもわかった。
だって、一瞬見透かされたのかと思って。そんなの恥ずかしいじゃない





「さっ 沢田くんだって…」

「ん?」




「沢田くんだって顔、‥赤い」

「え!?…あはは、そうかな」


反撃するように言ってみると少しだけ彼の頬が染まりそれを隠すように腕で覆われる。「言葉に出さないでよ」とぼそりと呟かれた声は雨の音でかき消され私には届かなかった。





「…濡れるけど走って帰る?」

「んー‥そうするしかないかなあ」





雨は今のところまだ止みそうもなく降り続き、学校の敷地内に生徒らしき人影も見当たらない


まるで閉じ込められているような空間にただあるのは水溜まりに映る2人と雨の匂い






「なんだか世界に2人しかいないみたいだよね」


「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥なに」


「…千愛ちゃんってロマンチックだよね」

「今恥ずかしい人って思ったでしょ」

「んなっ…そんなこと言ってないだろ、違うから!」



褒め言葉だから!と力強くしゃべると必死なのかさらに近づく距離

沢田くん!近いから!と叫び後退りつつますます頬が熱いくらい真っ赤に染まる。



「だってさ、」



「可愛いなあって 思ったんだよ」



沢田くんをチラリと見れば私以上に頬を染めて。

優しい視線と重なった






世界でふたりぼっちでも
君となら、








(雨が上がったとしても。
今はまだ、このままで)





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