私は髪を切った。
腰ぐらいまであった髪を肩上ぐらいにバッサリ整えて
あの子みたいにパーマを掛けて毛先を跳ねさせて



私は髪を染めた。
少し日焼けしてた黒髪を 思い出せない位ブラウンに染め上げて、あの子みたいに桜色の口紅を薄く塗って



鏡の中の私は憧れの女の子をイメージして笑ってみせる。

天使みたいなあの子になれば きっとあなたも私をまた見てくれる



きっとそうだよね?


優しいあなたは別れの言葉を言わないけれど



春も夏も秋も冬も。
一緒だったからわかるよ






あなたの笑顔が私を見てないことも

その先に誰がいるのかも




私たち、長く居すぎたのかな




鏡の前で

あなたを想い浮かべて
あの子みたいに笑ってみせる



あなたが好きなあの子になれば きっとまた愛を囁いてくれる



綱吉、綱吉、つなよし


何を見ているの?


(私はここにいるよ)



寄り添っていても
あなたの心は遠く









鏡を覗けば知らない子。
私でもあの子でもない 知らない女の子




あなたは優しいからきっと「よく似合う」と言うのかな?
そして気づかれないように私を見るあなたの瞳は誰かを重ねて甘いキスをくれるのかしら




「黒髪のほうが良く似合ってたのに」

欲しい言葉は賞賛ではなくて批難の言葉





(ああ、鏡の中の女の子)




(あなたは、誰なんだろう)




見馴れた私はもういない

愛を求めて 何処かに行ってしまった







瞳を閉じれば優しいあなた

幻だっていい。
そこに愛があれば

ゆっくり微笑むあなた
どうぞ どうか消えないで




頬を伝う涙
誰を想って流れるの


それさえも もうわからない






ああ 誰か

私は“間違えてない”と許してください


すがりつく愛と笑ったっていいから


だから、








どうしようもない

惨めで、バカな女。




(どうしたら良かったなんて、本当は初めからわかってた)




鏡の中の女の子は一瞬だけ顔を歪めた後、髪の毛を優しく撫で 部屋を後にした





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