少女は手に持っていた菜の花を一輪顔に近づけ すうっと香りを楽しみゆっくりと、しっかりとした口調で話しだします
「私はこの街を壊します」
目の前の青年の表情が変わりました
ですが少女は淡々と説明を進めます
「街の西側にある橋の向こうに空き家があるでしょ?そこに爆弾を集めてるの」
この辺りだと火薬が手に入りずらくて大変ですと少女はおどけたように笑った
「……。どうして、そんなことを」
君はいつも幸せそうに笑っているんじゃないの?街で聞いた噂とだいぶ違うことに青年は違和感を覚えました
「街の人はあたしのことなんて噂してたの?」
「……素直で、正直者な優しい女の子」
そんなの嘘っぱちだよ。 少女は呟く
「ずっと昔、まだこの街にどこかの自警団が設立されたばかりの頃は そこのリーダーを筆頭に身分差別や争いごとなくして皆で生きていこうって決めて どんな逆境でも笑いあってたの。 でもその自警団のリーダーや街の偉い人が変わってあの嘘をつく制度が出来て、みんな人を騙すのが楽しくて仕方がなくなってしまった‥ その噂も良いように聞こえるけど今じゃ正直者はこの街の中では異端でしかないの。正直者が馬鹿を見るって言うじゃない?まさにそれ」
私の母も騙されて殺された。でもその犯罪はみんな騙された方が悪いって相手にしてもらえなかったの。 少女は話ながら足元の小石をコツンと蹴りました
「この街は狂ってる。だから皆があの頃に戻れるのならどんなこともするわ、その為なら嘘もつくし犠牲も仕方がないでしょう?」
年齢に似つかわしくないような綺麗に口元を上げて少女は微笑んだ
「‥‥君は間違ってる」
「私が間違ってるかは貴方が決めるの?」
「‥違う、そうは言っていない」
「じゃあ口出ししないでね。綺麗事で人生変われるなら喜んで耳を貸すけど」
笑いながら吐き捨てるように言う少女を青年は口をヘの字にして見つめました。
「…君が言いたいことはわかったよ」
「お兄さんは私を止めますか?」
外国から来たお兄さんにこの街のことなんて関係ないでしょう?少女は笑います
「……確かに俺はこの街の出身ではないし、街の人は確かに嘘つきかもしれない。でも それだけじゃないだろ?君の事を気にかけてくれている人だっているじゃないか」
現に噂を口にしていた街の人の中には「あの子は花が好きだからきっと今日もあそこにいる」とこの場所を案内してくれた
「どんな形でも俺は君と同じ気持ちだよ。この街が大切なんだ。‥だから守らなくちゃいけない」
青年は少女の目を真っ直ぐに見つめる
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