だから俺はいつも言ってるじゃないか。俺はお前の味方だ、なんかあったら支えてやるって



「千愛。話してみろよなんかあったんだろ?」




部屋に入るや否やカバンも制服も部屋の隅に投げ捨てた。そんな物今はどうでもいい、それよりも俺の手の中で微かに震える小さな手をぎゅっと握りしめた


ベッドに千愛を座らせて隣に腰掛けるとギシリとスプリングの音が鳴る

相変わらず千愛は黙ったまま 声は俺に届かない





「千愛さ、今日なんか変」

「…そんなことないよ。元気だし」


「そんな顔で言うセリフじゃないのな」


頭をぽんぽんと撫でれば小さな唸り声。強がりばっかりで首を横に振り口唇を噛む千愛は俺を瞳に映さない



「大丈夫だから」

「…心配なのな」

「大丈夫だから!」



ね?だから安心して



そう言って理由も話さないまま涙を流し微笑む千愛を眺めていたらいくつもの言葉が胸を通り過ぎた





小さい頃からいつもそうだ。

まだお互いが小さいガキの頃。俺は白球を追いかけて、千愛はそんな俺を追いかけて。

いつも後ろをついて回っていた少女は 振り返ればいつの間にか立ち止まって泣いていた。


どうしたの?と声を掛けると千愛は夢遊病のように「怖い、1人にしないで」と泣いていて

俺はどうしたら良いのかもわからず「大丈夫だから」と裏付けもないまま手を握ってあやしていた。





夕焼けに染まる部屋 2人きりの空間。邪魔するモノは何もないのに、君はなにに怯えているの?




俺はいつも君の味方だから

お願い 泣かないで




「…俺じゃ千愛を支えられねえか?」


「‥違うの。でも、」





「大、丈夫だから…。」



ありがとう。
でも、ごめんなさい。




同じ言葉を呪文のように、祈るように繰り返す君に

俺は何が出来るだろうか。



あの頃のように
繋がる手だけが熱く、疼いて






(どうか俺に、頼って下さい)



綺麗な言葉をいくつ並べたって届くことはきっとないから

だから俺は、







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