「ねえ…ツーナヨーシ君っ!」


「うわっ!?ど、えっ…、なに!?」



ビックリして我にかえると目の前に密かに想いを寄せる千愛ちゃんが立っていた


「もー…ボーッとしてるけど大丈夫?もう補習終わってるよ」






辺りを見渡せば日もだいぶ傾き 夕焼けの日差しが差し込む中 教室にいるは俺と千愛ちゃんの2人だけ

黒板には「明日は16:30から」と先生の殴り書きが大きく書かれている




「あ、本当だ。…あれ?千愛ちゃん補習受けてたっけ」

たしか名簿には千愛ちゃんの名前はなかったはず





(…ってこんなこと言ったら名簿で名前探したのバレバレじゃん!?)



あわあわと頭を抱えていたらぷっと笑う千愛ちゃんの声


「そんなに焦らないでよ!私ね今週は日直だから補習で使った教材も運ばなくちゃなの」


先生も人使いが荒いよね〜って笑いながら窓の外を見たのにつられて俺も外に目をやる





オレンジ色の光 部活動生の笑い声 走る音 笛の音

風はほんのり冷たくも さまざま音が汗とともにグラウンドに溶けていた






今は季節の変わり目

この空気を感じるのも



俺たちにとって
きっと最後だろう







目線を千愛ちゃんに戻せば いとおしそうに眺める姿が夕日に染まって



凄く綺麗だった






「もう放課後だね。…そろそろ鍵しめちゃうけど いい?」




「…あ」


ごめん!と慌てて席を立つ。千愛ちゃんは日直 俺が帰るのを待ってたんだとここで初めて気づいた


(迷惑かけてこんなんじゃとことんダメツナじゃん俺…)




はぁ…と溜め息を着くと千愛ちゃんはクスクスと笑った



「‥千愛ちゃんもう暗くなるし…良かったらさ、一緒に帰らない?」

はっとして顔を上げれば
千愛ちゃんのきょとんとした目と視線が重なった





(…ってなに言ってんだ俺!?)

自分の発言に自分がびっくりしながらも 返ってくる言葉は意外にも早くて




「嬉しいけど…獄寺君が下駄箱で綱吉君のこと待ってるから今日は遠慮しとくね」


「ごっ…獄寺君が!?」

HRが終わってからずっと待っててくれたとすれば、もうかれこれ2時間近くになる




断られたことにショックを受けながらも教室を後にするため急いで荷物をまとめた



「教えてくれてありがとう!
…じゃあ先に行くね、また「綱吉君!」



「また明日」と続けようとすれば千愛ちゃんの声が言葉を遮った






なんとなくだったけど…、教室の雰囲気が変わって 少し緊張した空気が漂ったような気がした







「明日ね、天気予報が雨みたいで…今日より日が暮れるの早いから……だから」





明日は、一緒に帰ろう?






ダメかな?と続けた千愛ちゃんの顔は下向きがちでよく見えなかったけど、微かに覗いた耳が真っ赤で


つい俺も






俺もつられてしまった






(十代目!ご苦労様です!)



(………ヤバイさっき声が)

(…十代目?)







(柄にもなく、震えてしまった)







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