「ただいまー!」


「むぐっ、お かえり千愛」



部屋に入って来たと同時に俺の胸(むしろお腹)に勢い良く抱きつく千愛


いつもは俺が迎えてもらう立場だったし、こういうのは久しぶりだから心構えが気持ち出遅れて変な声が出た





「おかえり、今日は遅かったんだね」


「ふふふ、じゃーん!」




満足げにテーブルの上に登場させたのは正方形の白い箱

ご丁寧に真っ赤なリボンが結ばれ 紐の先はくるくるとカールが施されいかにもなラッピングが飾られていた




「わっ、なになに。お祝い事?」



今日は誕生日だっけ‥それとも記念日?

俺なにか忘れてんのかな、と不安が過り瞬間的に頭をフルに回転させてもちっとも思い浮かばない

若干ながらも引きつり顔の俺を見ても千愛のこの上機嫌な表情を見る限り最悪の事態という訳ではないらしい



鼻歌なんて歌っちゃって。こんなに機嫌がいいとこっちも楽しくなるなー
俺も自然に笑みが溢れた






「ねえ教えてよ?今日はどうしたの」


「ふふふっ!綱吉、開けてみて?」




早く早くと急かす千愛の横でリボンをほどき蓋を開けると、中からは色とりどりのフルーツがちりばめられ 真ん中にはチョコレートでできたプレートに「Happy Birthday」と書かれていた



「じゃじゃーん!美味しそうだと思わない?」


きゃっきゃとはしゃぐ千愛の手にいつの間にかフォークとお皿を準備されていた


でも俺の疑問は晴れない、寧ろますます深まるばかりだ





「ごめん、今日は誰の誕生日だっけ?」


「え?今日は誕生日誰かいたっけ?」


‥疑問に疑問で返されちゃった。
わかんないから聴いたんだけどな…、でもこれで誕生日を忘れたという失態ではないということだけはわかった、のかな




「じゃあこのケーキどうしたの?」

「もう一目惚れしてねっ買っちゃった」


「バースディケーキを一目惚れって‥。でもホールで食べるのはさすがに大きいんじゃない?」


「綱吉と2人で食べたらあっというまだよ」

「そんな無茶な」




「いーの!早く食べよー!」

「はいはい」




いつもこんな感じで俺は千愛に振り回されてる気がしてならない


けど、一緒に暮らしはじめて千愛の笑顔がますます増えた。俺も今まで以上に楽しいし、家に居る時間が増えた


家に帰るのも待ち遠しいし、「ただいま」「おかえり」のやりとりがこんなにも良いもんだと改めて教えられた




こんな生活も悪くない、かな




「綱吉!ほら食べるよ」

「ああ、ごめん」





「はいっ手を合わせてー」






「せーのっ」






『いただきまーす!!』









「たまにはこういうのもいいもんでしょ?」

「うん、そうだね」



(こんなのを幸せっていうのかな)





むしろ好きかも



そう言うとなんだか可笑しくなって お互いに笑い合った


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