「マフィアっていると思う?」

「‥いるんじゃねーか?」


「んーでも今時マフィアってどうなのかな」

「さあな」


「でも日本にも組長なんているんだからマフィアがいてもおかしくないか!」


「んで、そのマフィアはどこの国を拠点にすんだ?」



「そうだなあ。中国マフィア?なんかありがちかなあ…そうだ!フランス‥いやイタリアマフィアだとお洒落で紳士的なイメージするかも」

「はっ、紳士なマフィアってなんだよそりゃ」

「いーじゃんジェントルマン!」


「じゃあボスは誰がやんだよ」

「絶対に獄寺じゃない」

「んなっ!てめえ…」



「んーそうだなあ!ダメツナって言われてるツナがボスってのはどう?意外性があってよくない?」

「‥十代目はダメなお方じゃねえよ」


「あはは、知ってるよ。でもツナは優しいから苦労しそうだよね 全部背負い込んじゃいそう。あれは影で泣くタイプだね」


「俺がそんなことさせねえ!」

「おっ!右腕発言でたね!頼もしいなあ。そうこなくっちゃ」



「てめえバカにしてんだろ」

「あ!そのマフィアの名前思い付いちゃった!」



「(こいつ、人の話聞いてねえな)あ?なんだよ」


「よくぞ聞いてくれました!それはね…」















「カマンベールファミリーっていうの!」



「偉大なファミリーの名がチーズかよ!!」



千愛は鞄を遠心力で回しながら自分の身も委ねてクルクルと馴れた通学路であるこの道を我が物顔で俺の前を歩く



「これで来週の作文コンクールも大賞間違いないね!目指せ賞金5万円!」


「あれに賞金なんてついてたのか?」


「優しい獄寺くんからのポケットマネー」

「果てろ」



きゃっきゃっと小さい子供みたいにはしゃぎやがって。真剣に(大半は流したが)聞いた俺がバカみてえじゃねーか




一見くだらない会話にも付き合ってやるのは惚れた弱味というやつか、俺もつくづくな男だと鼻で笑った







「‥‥」



不意に歩くのを止める。

千愛も俺に気づいて歩くのを止めたが、俺は足元に目を向けたまま たまたま見つけた餌を探す蟻を目で追い 誰とも視線を合わそうとしなかった






「なあ千愛」


「なーに?」




「もし本当にマフィアがいて、ボスが十代目で 俺も十代目もイタリアかどっかに行っちまうって言ったらどーする?」



今まで陽気に笑ってた千愛が表情を変えて俺と向き合った




「そんなわけないじゃん ただの妄想だし。獄寺があたしを置いてどこかに行っちゃうなんて、‥嫌だからね」





なーんてね!

俺に向かって舌を出して挑発する千愛に眉間に皺を寄せながらも否定も肯定もせず元気良く笑うあいつの後ろをゆっくりと歩いた



道端には新芽がついた草花が目移りし 温かい風と共に2人の間に今はあまり見なくなった蝶々が飛んだ



新しい季節の匂いが漂いだしたこの道を2人で歩くのもあとわずかだ



もうすぐ春がやってくる。




卒業まで、あと少し




―‐―‐―‐―‐―
お題お借りしました
ひとりよがり
ありがとうございました!



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