二階から異世界
「……ん?」

喉の渇きで目を覚ました。ぐらぐらと不安定に触れるベットの上。いや、違うな、船の中だ。……病院みたいな匂いがする。私が知っている匂いよりももっとツンとした匂いだけど。
体を起こそうとして、あまりの体の重さに吃驚する。喉も乾いて痛いし、やけに細い腕には点滴の針(……たぶん)が刺さってて。服も布じゃなくて白いシャツに着替えている、大分ブカブカだけど。
そんな感じで周りを観察していると、ドアの外からドタドタと足音が聞こえて、バンッとドアが開いた。

「お嬢ちゃーん元気、か……」

「おい!そんな大声出したらドクターに叱られ、るぞ……」

「……こんにちは」

「「……お、」」

「「お嬢ちゃんが目ぇ覚ましたーー!!!」」


「ッ!?」

び、びっくりした……。



「良かったのォ!これで一安心じゃわい!」

「……はい」

「いやー、三日もずっと眠っていたからのォ……」

ずっとこの人喋っています。例の二人が叫んで出て行ったと思ったら今度はこの人がドタドタと凄い勢いで走ってやってきたのだ。

「あの、ほんとうに、ありがとうございます」

「おお、なーにわしらは市民を助けるのが仕事じゃけんの!」

「仕事……」

警察なのかな、海の上で船に乗っているから海上警察とか。

「……お嬢ちゃん海軍って知らない?」

「かいぐん?」

「聞いたことない?」

「ない、です」

ないよね、かいぐん、海軍かな?どっかの漫画でそんな組織あったけど。……もしかして海賊とかいんのかな、いやないでしょ。とか、くだらないことをうーんと考えていたらドクターがちょっとまってて。と言って。私を助けてくれたおじいさんとかドアの外に集まっていた人達を追い出した。

「お嬢ちゃん、今から色々質問するから。答えてくれる?」

「はい」

「じゃあよろしくね。俺の名前はリジーって言うんだけど、お嬢ちゃんの名前は?」

「スイ、です」

「スイちゃんは何歳?」

「……」

何歳……19歳だけどこの姿で言ったら絶対おかしいよね。

「あー、覚えてない?」

「え、いや。……はい」

確かに、〈この姿は大体何歳の時だったか〉は覚えてないから嘘じゃないよね。

その後リジーさんの質問は続いた。お母さんの名前は?とか、何人家族?とか、昨日なに食べた?とか。自分が乗っていた船の名前わかる?とか(もちろんわからないと答えた)

「じゃあ、どこに住んでいたかな?」

「(住んでいた、というか今現在住んでいるんだけど)……」

「グランドライン?」

「……え?」

グランドラインって、それって。聞いたことある。
けど、それは物語にでてくる単語で。

「ん?ここはグランドラインなんだけど。もしかしてイーストブルーやノースブルーの方だったりする?」

「わから、ないです」

だって、私の知っている限りでは。住んでいる海の名前なんて聞かない。そんな大きな規模で聞いても意味がないから。

「そっか、うん起きたばっかなのに色々聞いたりしてごめんね。あ、飲み物のおかわりいる?」

「だいじょうぶ、です」

「本当に?すごく顔色悪いけど……ごめん、無理させちゃったね」

「すこし、ねます」

「うん、そのほうがいいよ。後で薬持ってくるけど……その前に何か食べないとね、何食べたい?」

「……なんでもいいです」

「わかった、じゃあコックにすっごく美味しい料理頼んでおくね。それじゃ、お大事に」

リジーさんが部屋から出て行って、布団にくるまってみて脳裏に浮かぶのは。麦わら帽子のよく似合う少年の話だった。
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