アンケート二位@飯空(bacon)




※アンケ2位の飯空です^^ブウ戦後のイメージで。近親CP嫌いでない方はよろしければ、お付き合いください〜m(__)m



【Break you, if I can.】


 テストの2日前。
 友人の家に泊まり込みで勉強し、昼近くに帰宅した悟飯は、二階の寝室に行くのも億劫なほど疲れ切っていた。


「お、帰ぇったんか、悟飯。」
「ただい・・・・、お父さんっ!?」

 条件反射で答えかけたところで、声かけてくれたのが悟空だと気づき、思わず驚きの声を上げる。
 

 ・・・・この時間なら、いないと思ったのに。

 零れそうな溜め息を何とか堪え、愛想笑いを浮かべる悟飯に違和感を覚えた悟空は、ソファの背に重ねた両手に顎を乗せて首を傾げた。


「何驚いてんだ?」
「あ、いえ。お母さんだと思ったから。――今日は、修行行かなかったんですか?」
「ん?ああ。・・・・チチが悟天連れて出かけたからな。」
「はぁ・・・・。」

 留守番でも頼まれたのかな。

 理由になっていない答えに、今度は悟飯の方が生返事を返し、訝るように首を傾げる。だが、悟空はその反応を予想していたのだろう。珍しく困った顔で頭をかき、ソファに座りなおした。

 明らかに自分のためにスペースを空けてくれた父親から離れて座るわけにもいかず、気乗りはしなかったが、隣に腰を下ろす。さっきまでの眠気は、五月蠅く鳴り出した鼓動にかき消された。


「・・・・なぁ、悟飯。なんか怒ってんのか?」
「え?」
「いや、――生きけぇってからずっと思ってたんだけど、おめぇ・・・・オラを避けてるよな?」
「――っ、そんなこと、ありません。あるはずないじゃないですか。お父さんが生き返って、お母さんも悟天もすごく喜んでるし・・・・っ、んぐっ。」

 取り繕えず一瞬息を飲んだ後、慌てて平静を装いまくしたてる。
 だが、思い浮かぶままに言葉を連ねていた悟飯の口は悟空の手で塞がれた。

「おほ、ぅ・・・・さ…?」
「――おめぇはどうなんだ?」

 目を見開き、もごもご口を動かす悟飯をジッと見つめ、悟空が珍しく緊張を滲ませた声で問いかけてくる。

「僕・・・・?」

 眉を寄せて問い返す悟飯の口元から手を離し、悟空はしっかり頷いた。

「ああ、そうだ。チチや悟天が喜んでくれてるのは知ってるよ。見れば分かるからな。オラも、また一緒に暮らせて嬉しいし、悟天に父ちゃんしてやれるのも嬉しい。でも、おめぇは・・・・、なんかオラを避けてる気がしてなんねぇんだ。だから、あいつらじゃなくて、おめぇがどう思ってんのかが聞きてぇ。」

 いつになく真剣な父の目を見つめ返していると、胸の奥にしまい込んだはずの、いや、悟飯自身まだ半信半疑な感情が千々に乱れ、益々鼓動が五月蠅くなる。

 
 お父さん、僕は・・・・

 口を開いたつもりが、声にはならない。

 あくまでも父親として・・・・
 息子に拒絶される不安に表情を曇らせている悟空を見ていると、心がギシギシと不快な音を立てて軋んだ。



 長い長い不在の時。
 新しい家族が増え、穏やかな日々に慣れてなお、心の隙間が完全に埋まることはなかった。

 口に出せない愛惜の念は、一人で抱え込むうちにいつの間にか届かない相手への恋慕にも近い思いになっていた。


 ――あり得、ない。

 何度も何度も打ち消す度、想いはさらに深く募っていく。
 そして、二度と会えないと諦めていた父親との時間が思いがけず手に入った時、長い物思いは激しい焦燥感に変わった。

「僕だって嬉しいです・・・・。」
「ほんとか、悟飯?――オラ、おめぇには恨まれても怒られても仕方ねぇって思って・・・・」
「いえ、恨んでなんかいません。本当に。――お父さんが帰ってきてくれて、すごく嬉しい。ただ、・・・・」
「?」
「・・・・僕は、もう高校生ですから。悟天、みたいに素直に甘えられないんですよ。」
「何だ、そんなこと気にしてたんかぁ?」

 心底ホッとしたように大きく息を吐いた父親の顔は、たまらなく愛しく、たまらなく・・・・苦しい。

「おめぇだって甘えていいんだぞ、悟飯!」

 悟飯の頭をくしゃりと撫でた悟空は、他の誰にも真似できない満面の笑みを浮かべた。

「今日はチチも悟天も出かけてっから、誰も見てねぇし。」

 他意のない言葉が解放を待ち焦がれる悟飯の思いをチクリと刺激する。

「そうですね・・・・。」
「悟飯?」
「じゃ、お言葉に甘えて。」
「へ?・・・・んっ!?」

 悟空の肩に両肘を乗せて腕を絡め、悟飯は首を傾げている相手の唇をゆっくり塞いだ。
 大きく見開かれた悟空の目を見ないようにきつく目を瞑り、数回角度を変えて口づけた後、父親から身体を離す。

「おめ…ぇ、今の・・・・。」

 悟飯はポカンと口を開いたままの悟空から目を逸らし、唐突に立ちあがった。

「僕、もう寝ますね。」
「お、おお。」
「気にしないでください。別に意味なんてないんです。」
「そっか、うん。・・・・でもな、ああいうのは、その・・・・好きな相手にしかしちゃいけねぇんだぞ?」
「――僕、お父さんが好きですから。」

 無邪気なフリをする自分にザワリと心が泡立つ。

 ああ、なんて・・・・姑息なんだ。
 ・・・・まだ、壊すこともできず、失うことにも怯えてしまう。

「あぁ、そっかあ、そうだよなー。オラもおめぇは好きだけど・・・・。」
「分かります。親子ですもんね。あんなの、・・・・おかしいですよね。」
「ま、別に嫌じゃなかったけどな。」

 ハハハと明るい声で笑った悟空の言葉に曇りかける顔を見られないように背を向けた。


 そんな風に言われたら。
 ・・・・すべてを壊してでも、手に入れたくなるよ。

「おやすみなさい。」
「おお!ゆっくり寝ろよ。」

 ああ。
 ――また悪い息子になり損ねた。


 口にできない願望を押し殺し、悟飯は背を向けたまま頷いてリビングを後にした。





 階段を上がっていく足音が遠ざかると、悟空の顔から笑みが消える。
 言葉や表情から気持ちを悟れなくても・・・・
 触れ合えば、嫌でも流れ込んでくる想いがある。

「・・・・ごめんな。」

 悟空は片手を額にあて、小さく溜息を吐くと、誰に向けたのかも分からない謝罪の言葉を呟いた。

 



end

【あとがき】
いったいいつぶりだろう・・・・な飯空さんでした////
コメントに沿って鬼畜でも根底に愛を湛えちゃってる飯空さんを書きたかったのですが、アンケ作品は裏なし!ってことで、鬼畜よりは悩める悟飯さんになってしまいました^^最近の自分の悟飯さん萌え傾向のせいもありますが。
ん〜、でも、書かせていただくとやっぱり楽しい飯空さん!!
アンケで2位と大健闘なのも個人的にはとっても嬉しいです☆

皆様の思いにお答えするには少々筆力が及びませんでしたが、アンケートへのご協力に心から感謝いたしますヽ(^。^)ノ飯空、マンセー♪

【form 來庵】
悩める悟飯くんいいなっ//////
っていうか悟空さも・・・悟飯の気持ち知っちゃったら悩むんでしょうね〜//////
無邪気なふりとか悪い子に鳴り損ねたとか、そんなのもとっても悟飯くんらしくていいな、って思いました//////
鬼畜ももちろん大好きなのですが、こういう心理的なやり取りとかすれ違いとか葛藤って
ドキドキしますよね〜//////
悟飯くんの理性と体裁がどこまで持つんだろうか・・・悟空さがふっきれちゃって問い詰めちゃうんじゃないだろうか・・・とかいろいろ脳内で広がっていきます//////
個人的には悟飯くん頑張れ!って応援したくなりましたっ//////

素晴らしい飯空をごちそうさまでしたぁ//////


最後は1位のタレカカをタレ×金カカさん(來庵)、タレ×悟空さ(bacon)でお届けします^^

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