SS<バーダック×カカロット>



※バダカカ現代パロ、悟空さが若干(?)乙女かもしれないです。
大丈夫な方はどうぞ。





クリスチャンでもねえのにクリスマスだとか、
たかだか1日明けたくれえで謹賀新年だとか、
ただの企業戦略に乗っかってバレンタインだとか、
そんな記念日やら節句っつー行事はくだらないと思っていた。
…若い頃の俺は。




【ちょこれいと・どーるはうす】





 「何だ、こりゃ。」
ダイニングテーブルの上に、朝出勤する時にはなかったうさぎのぬいぐるみが2体鎮座していた。
しかも明らかにブライダルの贈答品だと言わんばかりの、それぞれタキシードとドレスを着たやつ。
こんな物を買うのは、この家のもう一人の住人くらいだ。
 「あ、父ちゃんお帰り。今日は早かったんだな。」
 「今日は絶対早く帰ってこいと口酸っぱく言うガキがいるからな。それより、またこんなもん買ってきたのか。」
 「ああ。たまたま入った雑貨屋でさ、在庫処分になってたんだ。可愛いだろ?」
 「はあ…とりあえず着替えてくる。」
齢19の次男坊カカロットはぬいぐるみ好きだ。
ガキだ乙女だとため息をつくが、その原因は大半俺にあったりする。
カカロットを産むとほぼ同時に女房が逝っちまって、男手ひとつで子供2人を養う俺は毎日遅くまで働いて。
年の離れた長男ラディッツはよく弟の世話を焼いていたが、それもあいつが高校入ってバイトを始めるまでの間だった。
殆ど毎日一人ぼっちで、それでもわがままひとつ言わないカカロットに、寂しくないようにとぬいぐるみを買ったのは俺だ。
それからどんどん数は増えて、今じゃあいつの部屋はドールハウスと化している。
その部屋の中で、身の丈ほどあるでかいぬいぐるみを抱えて眠っていた幼いカカロットに、胸を痛めたのはもう何年前だろうか。
よくスレもせずにここまで素直に育ったものだと思う。


部屋着に着替えてリビングに顔を出すと、カカロットはえらく上機嫌で鼻歌を歌いながらケーキを作っていた。
 「チョコか、どうりで甘ったるい匂いがすると思ったぜ。」
 「学校の課題なんだ、バレンタインだからチョコのお菓子作れって。でも父ちゃん甘いの苦手だからビターにしたんだけど…」
 「ほー。じゃ、そいつに合わせるならワインだな。」
ぬいぐるみが隅に除けられたテーブルには、既にサラダやローストビーフが用意されていた。
昔は皿割るのが得意技だったくせに、料理にハマって調理学校に進学して、カカロットはめきめきと腕を上げていった。
親はなくても子は育つ、ってやつか。
ワイン片手にそんな感傷に浸っていると、ようやくカカロットがケーキを運んできた。
チョコレートでコーティングされた上に、白と黒のハート型のチョコと飴細工が飾られ、アラザンを散らした洒落たケーキ。
 「普通に店にありそうだな。」
 「だってそういう勉強してんだもん。ま、オラの弱点はセンスだって言われたけど。」
レポートでも書くのだろう、数枚写真に収めてから、慣れた手つきで切り分ける。
一口食べれば、広がるのはほろ苦いビターチョコと甘いホイップクリームの味。
 「どう?」
 「美味えよ。」
 「よかったっ。あ、足りなかったら使わなかったマジパンがあるけど。」
 「いらん、ありゃただの砂糖の塊だ。」
 「そう言うと思った。」
 「なら聴くな。」
甘味は、俺の口に合わない。


 「でさ、父ちゃん。これなんだけど、」
夕食後、カカロットは先刻のぬいぐるみ――タキシードを着たうさぎを差し出した。
俺に持っていてもらいたいのだと。
 「何で俺がこんなもんを…」
 「ほらここ。父ちゃんにそっくりだろ?」
指差したそのうさぎの左頬、そこには俺と同じ十字傷。
聞けばもともと刺繍してあったらしい。気付かなかった。
 「ふーん…つーか、そもそもおめえが買ってきたんだから、おめえが保管してりゃいいだろ。」
 「駄目だ、父ちゃんが持っててくれなきゃ!」
 「だから何で、」




 「もうすぐ…オラたちが一緒になって1年だろ…?」




忘れちまったのか?と言いたげな目に、はたと思いだす。
1年ほど前、ふたりで婚姻届に署名したんだったか。
提出なんてできるはずのない、架空の届け出を。
それをこいつは記念日と呼ぶのか。
 「だから、この1対のぬいぐるみはオラたちの記念。オラじゃなくて、二人で持っていたいんだ!」
嗚呼、まったく、俺はこいつの涙に弱い。
あの昔、ぬいぐるみに抱きついて眠るその眦(まなじり)に残っていた涙の跡が思い出されるから。
 「わーったよ。忘れてて悪かったな。」
へにゃりと笑うカカロットを、お前はそうやって笑ってろと小突いた。
 「さて、飯も食ったことだし…食後のデザートにするか。」
 「へ? ねえぞ、そんなの。」
 「あるじゃねえか、目の前に。」
 「それって……もしかしなくても、オラ?」
 「安心しろ、今日はてめえの部屋にしてやる。」
 「そーいう話じゃねえ! ちゅーか父ちゃん、甘いもんは苦手なんだろ!?」
 「さあ、"デザートが嫌い"と言った覚えはねえな。」
 「卑怯者〜!」


カカロットが喜ぶなら、くだらないイベントも悪くない。
そんな考えをしている己を自嘲しつつ、暴れるカカロットを肩に担ぎ、記念のぬいぐるみはまとめて小脇に抱えた。


ドールハウスの部屋の片隅、チョコレートよりも甘美なお前に溺れよう。




end


【作者様コメント♪】
せっかく開幕がバレンタインなので、それをちょこっと(←しゃれたわけではない)からめたお話を書こうと思い…
そしたら砂吐くくらい甘ったるいバダカカになってしまいました。
悟空さは意外と器用だと萌えます、私が(笑)
文才のなさには目をつぶってやってください…
でもバダカカ始め愛する悟空さ受けを目一杯消化できて大満足でしたv
お祭り最高ですありがとうございました!


◆黎明昴様
HP:Realize The Cosmos



【主催者より御礼^^】
<from bacon>
うわぁぁぁ/////
甘い、甘いですね、ええ、甘いです。ビターチョコもやっぱりチョコなのです、甘いです(大事なことなので何度でも)。
カカ、可愛い・・・・ってか、うちにもお嫁に来てくれないですかね?ダメですか、そうですか。何よりこの溺愛っぷりだと、バダに瞬殺されますね(笑)。個人的に料理が得意なカカたんも、目から鱗な設定で激しく萌えて悶えました////カカの作ったケーキを食べれるなら、残業も文句言いません。等身大のぬいぐるみ抱いて寝てるとか・・・・どこまで私を萌え殺す気ですか、本当に><////

昴様のイラストももちろん大好きなのですが、こうして小説で拝見する甘いバダカカはまた違った魅力というのか、想像がさらに膨らんで脳内の二人のビジュアルがもう甘々すぎてニヤニヤが止まりません。

この度はお祭にたくさんの素敵なカカをご提供いただき、本当にありがとうございました^^

<from 來庵>
おおお、カカロット可愛い//////
ナニこの出来た奥さん/////可愛いっ/////
料理もきっとバーダックの為に勉強したんですよね〜(*>艸<)
不器用なりに一生懸命にバーダックの為に上手くなろうとしたカカロットを想像したら死ぬほど萌えました/////
そんな健気なカカロットのためなら苦手だのなんだの言わず微笑んでケーキも食らいますよ、バーダックだって(*>艸<)
甘ったるい二人にぴったりなバレンタインナイトが迎えられたことでしょう//////
もうずっと二人でドールハウスに閉じこもっちゃえばいいっ/////
文字通りちょこより甘いバダカカストーリーを、ごちそうさまでした(*>艸<)

そしてこのお祭りで昴様の可愛いカカロットのたくさんの顔を拝見出来て幸せです/////
本当にありがとうございました///////

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