SS<純血サイヤ×悟空>-A



「冗談だって。いつもからかうから、仕返ししたんだよ」
「だからって、此れは洒落にならんだろうがっ」

 あげるまで離してくれなさそうなので、悟空は笑いを堪えながらタ―レスにはチョコキャンディーが入った籠を手渡す。
 何故か喧嘩しようとするバーダック達を無視して、悟空は遠目に眺めていていると探していた人物の後ろ姿を見つけた。

「パラガス〜!!王さま〜!!」

 生きていた頃はそれなりに因縁があった二人だが、お互い息子に苦労するのだと分かり合って肩を並べて酒を酌み交わすパラガスとべジータ王に悟空は飛びついた。

「パラガスのおっちゃんにはティラミスな!!王さまにはトリュフチョコだ!!」

 あまりにも先程と態度が違う悟空に、バーダック達は唖然としている。
 しかしそれも最初だけで、まんざらでもない顔で満面の笑みを受かべる悟空からチョコを貰う二人にバーダック達は怒りがこみ上げ争奪戦になりかけたが悟空がスーパーサイヤ人3になることで、強制的に収拾がついた。

「どうしたカカロット、付き合わねぇのか?」
「ああ、ちょっとな。行くとこあって…」

 チョコで酒盛りだと仲直りしたバーダック達を遠目に見ながら、ラディッツは悟空に問いかけた。誰かを探しているのか、相手の気を探して目が右左へと動いている。
 探していた人物を見つけたのか、ラディッツに手を振って悟空は飛んで行くのを、タ―レスから貰ったチョコキャンディーを頬張りながら見送った。


 食べ損なってしまっていた死者達にキャンディーを宙に放り投げて配りながら、悟空が辿り着いたのは血の池だった。

 すみっこで、寂しさを背中で表現するように蹲っている人物が居た。
 近くまで歩み寄れば鼻を啜る音が聞こえ、泣いているのだと分かった。




「ブロリー」

 優しく名を呼んでやれば、ブロリーは勢いよく悟空に振り向いてきた。先程とは打って変わって黒髪のブロリーの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。余程、悟空に無視されたのが悲しかったのか悟空の笑顔を見た瞬間、無言で悟空の腰に抱きついてきた。
 最初は驚いたもののその姿があまりに不憫で、悟空は引き剥がす事が出来なかった。

「ががろっど…」
「あーあーあーあー、鼻水でドロドロじゃねぇか。しょうがねぇなぁ。でもおめぇが悪いんだぞ。いきなり暴走すっから」

 圧し掛かってくるブロリーを苦も無く受け止めると悟空は、巾着からガサゴソと取りだした物を、嬉しそうに手渡す。
 悟空が巾着から取り出したのは大きなワッフルだ。洋ナシを煮て混ぜたカスタードソースが挟んであるのか、仄かな甘さが二人の鼻先を擽った。ワッフルの上にはチョコソースがふんだんに掛けられ、見る者の食欲を増幅させる。
 それからブルーベリーソースが掛かったチョコスフレにへーゼルナッツチョコのアイスケーキ、砂糖で煮たオレンジをビターチョコでコーティングしたトランシュ、塩キャラメルを挟んだチョコケーキと、次から次へと出て来る色とりどりのお菓子に、ブロリーは泣いていたのを忘れて見入っていた。

「みいんな!食べてもいいんだぞ!」
「本当にいいのか?」
「バレンタインの日だからな!」

 悟空もよくバレンタインの日を知ってはいないが、大好きな人だけではなく親しい人にも贈るものだと聞いたようだ。
 皆が言っていた事だと悟空は嬉しそうにブロリーに伝えれば、ブロリーは徐に近くにあったシューチョコクリームを手にとって悟空に差し出した。
 お菓子とブロリーを交互に観て、悟空は目を輝かせた。

「オラにくれるのか?」
「俺からのバレンタインだ」

 ブロリーもよくは分かってはいないが、悟空が喜ぶならと、嬉しそうにシュークリームを頬張る姿を見たかったからだ。
 最初こそ暴走してチョコをくれないのかと絶望に叩き落とされていたのが嘘のように、ブロリーの表情は穏やかだ。
 ふと遠くを見やれば、羨ましそうにセル達が此方を窺っていた。あれだけ山の様に菓子を貰って置いて贅沢だなと思ったが、明らかに此方の方が豪華だ。
 それだけ自分が悟空に思われているのだと感じれば感じるほど、ブロリーは笑顔を取り戻してゆく。
 だが次第に、ブロリーの表情は暗くなってゆく。どうしたと悟空が問えば、ブロリーは不安げに問いかける。

「カカロットからは、色んなものを貰ってばかりだ。けれど俺はお前に何も返してやれない」

 まるで寂しげな犬のように項垂れるブロリーに、悟空は何言ってんだとブロリーの髪を撫で回す。
 おおげさなぐらい撫で回すので、流石に困惑したブロリーは悟空を腕の中で抱きこむと、悟空は見上げてブロリーの頬に口付を落とした。

「いいんだ。おめぇが嬉しそうなら、オラも嬉しいから」

 これは償いなのかもしれないと、悟空は思考の隅で思う。きっとブロリーは不貞腐れて菓子を突き返す筈だから言わないけれど。
 気付いているのかそうでないのか、曖昧な笑みを浮かべてブロリーは悟空の顔中にキスを降らせた。

 それは甘く甘く、時折ほろ苦い口付けの香りで、幸せを満たすようにその香りは色へと変化し、虹色に反射するシャボン玉のように宙を舞って行った。

 それから二人の事を聞き付けたバーダック達が乱入してきて騒然としたが、ブロリーがキレる前に悟空が先にブチ切れて捻り潰したのはまた先の話だった。

-fin-


【作者様コメント♪】
悟空が皆にチョコやお菓子を配り回る話を書いてみました。オチはそうとう迷いましたが、ブロリーは暴走しまくって悟空が逃げちゃって結局貰えなくて可哀想だったので、甘々にしちゃいました。二人でお菓子を頬張る様を、皆様も楽しんでいただけたら幸いです。

◆EN様
HP:拙い夢寐



【主催者より御礼^^】
<from bacon>
二作目の分類の仕方がこれでよかったのかしら…?と思いつつ、愛され悟空さの魅力全開な作品にとっても萌えさせていただきました★

打って変わってほのぼの可愛いカカに読んでる間中頬が緩みっぱなしで…特に一瞬無視された(笑)、浅黒いカニさんの辺りでは、そろそろ叫んでいいですか?という気持ちでございました(やめろ)。私は生まれ変わったらあのチョコキャンディーになろうと思いますw

パラガスや王様にまでチョコ配れちゃうのは、もうカカロットだからこそだ!!とウンウン頷き、最後は大大大好きなブロカカ落ちですかぁ〜〜、ご馳走様です―と脳内は絶叫モードでした^^チョコにも負けず劣らず甘い二人がとってもツボでございます。

この度は素敵な作品二話もご提供いただきまして、本当にありがとうございました!!


<from 來庵>
スイーツサンタな悟空さっ/////
悟空の笑顔と美味しいスイーツはきっと地獄も天国に変えちゃうくらい幸せ気分に浸れると思います/////
一度は対峙した相手にさえも、あの明るい笑顔でチョコレート配れるなんてやっぱり悟空だからですよね〜/////
んで相手もきっとその笑顔につられるように笑顔になれちゃうんだと思います//////
たくさんのキャラクターみんなが悟空大好きで、悟空もみんなが大好きなほのぼの感に
どっぷり浸ってたら最後ブロカカで//////
思わず、『良かったねぇ、ブロち・・・』と呟かずには居られませんでした////

この度は本当に美味しいお話を、ごちそうさまでした/////


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