SS<バーダック×カカロット>




【匂い】


今・・・どこに居んだろう・・・
帰還予定は三日も前だったと言うのに・・・。

溜息を吐いたカカロットは、未だ帰還しない父親の寝室の扉を見つめた。

別に・・・いいよな・・・?

心の奥で自問自答し、ごくりと唾を飲むとカカロットはドアノブに手をかけた。
薄暗い部屋の中に足を踏み入れると、カカロットはまっすぐにベッドに向かって腰かけた。
煙草の匂いの染み付いた部屋をぐるりと見回す。

「父ちゃん・・・早く帰って来てくれよ・・・」

無事ならいいんだけど・・・無事なら・・・

また大きく溜息をつき、そのままこてんとベッドに寝転がると、サイドボードが視界に飛び込んだ。
ほったらかされたままの煙草と灰皿・・・
カカロットは身体を起こすと、ゆっくりとその手を煙草に伸ばした。
箱を開くと、数本の残りとライター・・・。
火をつけなくても鼻孔を刺激する匂いは、決して心地の良いものとは思えない。

それでもその匂いは確かに・・・父親の匂いで・・・。

慣れない手つきで、一本を抓み出すと、フィルター部分を咥えてライターに火を付けた。
ぼんやりと部屋が明るくなったその瞬間、半開きだった扉がゆっくりと開いた。

「不法侵入して喫煙か?」

「父ちゃんっ!?」

ライターの火が消えると、残像のように目に残る父親の姿にカカロットがぽかんと口を開くと咥えていた煙草が渇いた唇に貼りついた。

「何情けねぇ面してやがる・・・。」

溜息にも似た笑みを零し、カカロットの唇から煙草を取り上げる。

「・・・っ!!」

乾いた唇が割けるピリッとした痛みが走り、カカロットはバーダックを睨みつけて、唇を指の先で拭う。

「痛ぇじゃねぇかっ・・・・あっ、血・・・」

指先に僅かに残った血の跡にカカロットは頬を膨らませた。

「オラもうガキじゃねぇんだから、煙草ぐれぇいいだろ?」
「似合わねぇからやめとけっての。」

くすっと笑って、カカロットから取り上げた煙草を咥えると、小さく息を吸い込みカカロットの隣に腰かけた。

「・・・っていうか、今日まで何してたんだよ?帰ぇってくるって言ってたの、三日も前だろ?」
「んなこたぁてめぇにゃ関係ねぇだろ。」

吐き出した煙が中で溶けていく様に視線を流しながらバーダックは面倒そうに答える。
カカロットは唇を尖らせた。

「オラ父ちゃん帰って来るの待って・・・ずっと家に居たのに。」

不貞腐れて再度ベッドに転がったカカロットにバーダックは薄い笑みを零した。
零れそうになった灰を灰皿に落としてから、もう一度咥えて深く紫煙を吸い込むと火種を灰皿に押し付けて消した。
寝転んだカカロットに覆い被さったバーダックは本の仕腰だけ顔を逸らし、呼吸器に染み込んだ煙を吐き出すと、自分を睨むカカロットの瞳をじっと見つめ返した。
わかっちゃいねぇんだろうな・・・こいつは。
何も言わないカカロットの唇にゆっくりと舌を伸ばし、裂けた唇を舐め上げるとカカロットはびくりと肩を竦めた。

「父ちゃん、ずりぃ・・・」
「真っ正直でいいことなんてねぇだろ?」

応えるとほぼ同時にその薄い唇に自らの唇を重ねる。
カカロットがゆっくりとバーダックの首に手を回すと、バーダックはカカロットの口内へと舌を滑り込ませた。

苦いような不味いキス・・・
それでもそれはとても・・・

カカロットは口内で暴れるバーダックの舌先に応えるようにその舌を追う。
唇の端から一筋の雫が零れ、カカロットの顎へと伝う。
唾液の絡む粘着質な音がカカロットの聴覚を刺激し、その耳の先を赤く染めた。

「んっ・・・ふぅ・・・ぁっ」

苦しくなった呼吸が艶めくと、バーダックはゆっくりと唇を離す。
濡れて光る唇をそのまま首筋へと移動させ、白いその首にわざを吸い付き官能の印を刻む。
鈍痛にも似た小さな刺激にカカロットは小さく身体を震わせた。

「父ちゃ・・・、ん。」
「煙草なんかで誤魔化そうとしねぇで・・・欲しいもん、言ってみろよ?」

余裕を含んだバーダックの笑みにカカロットはキスで蕩けた視線を投げかけた。

「オラっ・・・今夜は父ちゃんの傍に居てぇ・・・」
「そんなまどろっこしい言い方で俺が動くと思うか?」

バーダックはカカロットの腿へ馬乗りになり、アンダーシャツを捲り上げた。

「・・・だったら、オラからさせてくれよ・・・っ・・・」
「はぁ?」
「だからっ・・・オラがどんだけっ、父ちゃんのこと、欲しいか・・・態度で示すからっ・・・っ。」

潤んだ瞳を隠すように自らの腕で目を伏せたカカロットの赤くなった頬が賢明さを物語る。
バーダックはふっと笑ってカカロットの上から降りると、ベッドの上で胡坐を組んでシャツを脱ぎ捨てた。
カカロットはがばっと身体を起こし、見慣れたはずのその肌に視線を這わす。
数々の戦で刻まれた傷跡が視線を捉えて離さない。

「欲しいってこういうことだろ?」
「・・・父ちゃんの変態っ。」

フンと顔を背けるものの、自らの申し出だ・・・今更首を横に振ることは出来ない。
カカロットは耳の先を赤く染め、口角を持ち上げたまま顎先を持ち上げ急かすバーダックに応えるようにシャツを脱ぐ。
バーダックの雄雄しい肌とは、比べ物にならない、透き通った白い柔らかい肌が薄暗い室内に晒された。
満足そうにふっと笑ったバーダックの絡みつく視線がカカロットの心の奥までも縛るようで思わずぎゅっと目を閉じた。
大きく息を吸うとどくどくと心臓の音が激しく耳の奥に呼応する。
それを振り切るように、ゆっくり息を吐き出して、瞼を開いてまっすぐバーダックを見つめた。

「オラ・・・すっげぇドキドキしてる・・・」

バーダックのごつごつと節くれだった皮の熱い手を取ると自分の頬を包むように引き寄せた。

「・・・さっさと来いよ。態度で示してくれるんだろ?」

バーダックの挑発的な笑みにカカロットはごくりと唾を飲み、こくりと頷くとゆっくりとバーダックの首に手を回し、その顔を引き寄せた。

end


【あとがき】
煙草の香りで余計切なくなっちゃったり、寂しかったりを紛らわそうとしたらバダに見つかってちょっと恥ずかしいけど、いいやもう頑張っちゃえ!みたいなそんなカカロットですw
大人ぶってもまだまだバダの掌の上なんでしょうけどね〜^^
拙い文章ですが・・・最近書いてなかったけど・・・やっぱりバダカカ大好きです〜/////

【from bacon】
ああああ―――んっ、カカロット可愛いぃぃ〜〜/////
今回來庵さんのお話のカカたんは結構積極的でドッキドキします^///^
やっぱりお祭主役ですもんねっ、受けとはいえ、目立っていただかなくちゃぁっ。

バダのクールさもひっくるめて堪らないですっ。
R16の壁が非常にもどかしいw

煙草の残り香ってドキドキしますよねー。
私も自分は吸わないから、バダの煙草の香りでバダを求めるカカ、ちょっと気持ち分かりますっ。裏はなくとも、萌えはある!!ほんとに素敵なお話ご馳走様でしたー★


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