【単純連鎖】 「よっし、カンペキ!!」 綺麗な藤色の箱に、濃い紫色のオーガンジーリボン。 不器用なりに蝶々結びを何度も結び直したカカロットは、その出来栄えにいたく満足した。 「そろそろ来る頃だよな。…喜んでもらえっかな…?」 こんなイベントなどきっと一顧だにしないだろうと解っていながらも、どうしても心が弾んでしまう。 「あっ!きた!」 小走りで駆けて行き勢い良くドアを開けると、ターレスが微笑みながら口を開く。 「何をそんなにはしゃいでいるんだ」 あのな…と言おうとしたカカロットを、ターレスはそのまま抱き竦めた。 カカロットの顎を簡単に捕えると、強引に口付ける。 「んッ……」 突然のことで驚きつつも、すぐにターレスのキスに蕩けてしまうカカロットだったが、今日のキスはいつもと少し違った。 (…チョ…チョコの味…?) 絡めた舌は、ほんのりと甘い味覚を感じ取ったのだ。 「んん〜ッ!!」 カカロットがターレスの胸を叩いて嫌がりだしたので、ターレスは唇を解放した。 「なん…で…?」 「ん?」 脳裏を掠める嫌な予感に、カカロットがおずおずとターレスに尋ねる。 「何でチョコの味がするんだ…?」 「あぁ、さっき女の子達に貰ったん…」 ターレスの台詞の最後は、カカロットの怒声によって掻き消された。 「……ふざけんな…ッ!!」 ヤキモチを妬いた可愛いカカロットを、少しだけ楽しもうと思っただけ。 せっかくのバレンタインデーに、玄関口で恋人に不機嫌になられてしまったターレスは、カカロットを抱き寄せると頭を優しく撫でてやる。 「そう、拗ねるな」 「は…きだせ…よ…」 「吐けって……」 珍しくかなり困惑気味のターレスをよそに、カカロットはターレス顔を見ようともしない。あまつさえ浮かんでいるのは涙。 ベッドの上では嗜虐心が煽られるものだが、こういうときに泣かれるのには流石のターレスも弱かった。 「…ぅ…」 「困ったな…どうしたら機嫌直してくれるんだ?」 カカロットの涙を拭ってやり、ターレスは耳元で囁いた。 「…してやろうか?」 カカロットは顔を上げ一瞬目が合うも、すぐに俯いてしまう。 いつもなら耳の先まで真っ赤にしてカカロットを小さく頷かせる魔法の言葉も、今日ばかりは効果が無いらしい。 カカロットはぷいっと顔を背けると、洗面台の方へ歩み寄る。 「ハミガキ…」 歯ブラシを持ってきたカカロットが胸に顔を埋めてきた。 「早く全部消してくれよ……」 カカロットはそれだけ言うと、ターレスに歯ブラシを渡し、向こうへ行ってしまった。 歯磨きを済ませたターレスが口を濯いでいると、タオルを持ったカカロットが戻ってきた。 「あと風呂もちゃんと入れよな…」 「はいはい」 ターレスは水を止め、いつものようにカカロットの腕を掴んで風呂場に連れていこうとしたが、カカロットはもがいて腕の中からするりと抜けてしまう。 「一人で!」 「…一人で?」 普段では考えられないカカロットの行動にターレスは少し面食らってしまったが、どうやらカカロットは相当怒っているようだ。 「…オラ、後で入るから…」 くるりと背を向け行ってしまったカカロットに、ターレスは深追いするのは止めた。 赤く染まった頬に潤んだ瞳、怒ってちょっと強めな口調のカカロットも可愛くて、あまりお目にかかることも出来ないものだが、そんな呑気なことも言ってられない。 ふと見れば脱衣所には、いつものように二人分の着替えが用意してある。 勿論、今日も二人で入るはずだったのだろう。 「…」 ターレスは溜め息を吐くと服を脱ぎ捨て、一人風呂場のドアを開けた。 夕食が済み、ソファでくつろぎながらふかす煙草の煙の行方をなんとはなくたどっていると、カカロットが緊張した面持ちでラッピングした箱を持ってきて、ターレスの前に差し出した。 「これ…きょ、今日バレンタインだから…ッ…」 「くれるのか?」 すっかり機嫌が治った様子を見て微笑むターレスの顔を凝視できずに、カカロットは俯いて頷く。 そして隣に座り、箱を開けるターレスをドキドキしながら見つめた。 「…貴重だな、お前の手作りなんて」 箱から現れたシフォンケーキを見たターレスは、カカロットに向かって笑いかけた。 「美味そうだな。」 見つめられ再び発せられた言葉に、カカロットの心は幸せな気持ちでいっぱいになる。 さっきまでのことなんてもうどこかへ吹っ飛んでしまった。 「フォーク…持って来る」 照れ隠しに席を立ったカカロットは、ふとまだもうひとつのプレゼントを渡していないことに気づく。暫し足を止めてフォークを片手に何やら思案するカカロットだったが、決意を固めると、プレゼントを後ろ手にターレスの元へと戻った。 「あと、これ…ッ…」 背中に隠していたプレゼントを、ターレスに差し出した。 「ん?」 「チョコと一緒に、何かプレゼントあった方がいいかなって思ってさ…ッ!!」 カカロットの様子が明らかに可笑しい。 「開けていいのか?」 「…うん……」 カカロットはさっきまでの早口でまくし立てたのとは正反対に、今度は蚊の鳴くような声で返事をした。 ターレスが包みを開くと、中から出てきたのは濃紫のトランクスだった。 バレンタインの特集に乗せられて買ってしまったものの、正直渡すのが恥ずかしくてさっきまでずっと迷っていたのだ。 暫しの間にカカロットは心配そうにターレスの横顔とトランクスを交互に眺めていたが、ターレスがクスクスと笑い出した。 「ちゃんと使ってくれよ…?」 カカロットは手をパタパタと意味不明に動かしつつ、ゆでだこのように顔を赤らめターレスの顔を見つめる。 「今履いてみたほうがいいか?」 「いっ…今はいいよ…ッ!」 ターレスの提案に、カカロットは今度は首を大きく横に振った。 「たしかにそうだな」 ターレスは意味深に笑うと、真っ赤になっているカカロットをそのまま押し倒した。 前髪をかき上げ、現れた額にキスをそっと落とす。 「もう他にプレゼントはないのか?」 ターレスの身体の下、至近距離で見つめられ、カカロットは胸がドキドキして言葉が出てこない。 「ないならそろそろ、お返しにお前のこと、チョコより甘くとろけさせていいか?」 「…ホワイトデーは来月だけど…?」 やっと出てきたどこか間抜けなカカロットの発言に、ターレスはクスリと笑うとまたキスを落とす。 「あいにく返事を一ヵ月も待てそうにない。…してやろうか?」 「…うん」 ターレスの誘いに今度こそカカロットが断るはずもなく、ターレスに身を委ねるカカロット。 シャツのボタンを外され前をはだけられ、ターレスの整った手が胸板をなぞっていく。 「…いつも手触りがいいな」 「あ、ターレス、オラまだ風呂…ぁッ…」 ターレスの指が平たい胸にある、うっすらとピンクに染まる飾りを掠め、カカロットが小さく呻いた。 カカロットは意地を張っていた所為で、まだお風呂に入っていなかったことを思い出したのだ。 「大丈夫だ。俺にはいい香りしかしてこない。」 ターレスがもう片方の手で優しく髪を撫でキスを落とすと、カカロットは慌てた顔を緩め、潤んだ瞳でターレスを見つめた。 「そうやってすぐ誘うような顔をする。本当に心配だ」 カカロットの頬に触れながら、ターレスがからかうように笑う。 「…ターレスしかいないから…。ターレスは…」 「分かったから黙ってろ」 唇を啄ばみ、それは深いキスへと変化する。 「…んん…っ…」 ターレスはすぐに、カカロットの舌をやさしく絡めとる。 タバコの味がするターレスの口腔で舌を甘噛みされるのに、カカロットは滅法弱い。 それを知っているからこそ、執拗にカカロットの舌を攻め立てた。 顎を捉えると今度は口付ける角度を変えて、カカロットの口腔をたっぷりと味わう。 それに応えるように、最初こそ逃げ腰なカカロットも段々と積極的に舌を絡ませてくる。 「…ンッ…」 カカロットの様子を見計らって、ターレスは惜しみながらカカロットの唇を開放した。 大きく肩で息をするのを尻目に、カカロット自身にジーパン越しに触れる。 「あ…ッ……」 感触を確かめ、少し意地悪そうに笑う。 「カカロット、だいぶ硬くなってるな」 「…うん……」 微かに頷くカカロットに、ターレスは至極満足そうだ。 「今日はまた格段に素直だな」 「意地張ってる余裕なんていつもないんだ…」 ◆◇◆◇ カカロットにつられたと言うわけではないだろうが、珍しく素直になったターレスが、うっとりと余韻に浸っているカカロットに向かって囁く。 「足りないな…もっと、欲しい」 事後の扇情的な瞳に見つめられると、いつだってもう目を逸らせない。 「…う…ん……」 カカロットは幸せそうに頷くと、ターレスの項に腕を回す。 プレゼントは、まだしばらく包みを開ける暇はなさそうだ。 end 【作者様コメント♪】 フェードアウトは特技です! からかってやろうと思って、地雷踏んじゃったターレスさん。 意外と悟空さはガーッと怒ったらケロッとしてそうですよね。 そんな単純で素直な悟空はターレスの言動にも影響を与えてたりしたら萌えです。 ◆東都PZ様 HP:NO HP 【主催者より御礼^^】 <from bacon> 東都PZ様……っ、この度は悟空受け祭に参加いただきましてありがとうございます(*^。^*) 色々サプライズな訳ですが(笑)、とりあえず読み終えた後は、一瞬タレカカじゃなくて私がフェイドアウトしてもええですかぁ〜〜???というくらい、萌えました////もちろん、あまりの萌えウェイブに直ぐやっぱり素敵、あたしも書きたい――ってなったんですが、ああ、ほんとに満足です、ご馳走様、サヨ〜ナラ〜気分になれるくらい甘い二人に…というか、もう頭から食べたいくらい可愛いカカたんに萌え転がりましたです。 友情出演的(笑)濃紫のトランクスもいいですね<●><●> ええ、そりゃもう、タレにはとってもお似合いだと思います。ラッピングまでパープル統一とか、カカたん手作りのケーキとか、もう私がまとめていただきたいです^///^カカたんが、タレの顔とトランクスを交互に見比べてるシーンは一瞬あれ?ってトリッキーな空気に包まれ、混乱していました(なぜかは言うまでもなくw) まだまだ色々言いたいですが、ぼろ出しそうなので、とにかく素敵なタレカカさんでの参戦に心から感謝感謝です!ありがとーございました♪ <from 來庵> 東都PZ様、改めまして悟空受け祭にまさかのご参加いただき、誠にありがとうございます///// なんですかね、この・・・けしからんくらい甘いタレカカはっ//// カカロットの健気さももちろんのこと、ターレスの甘やかしっぷりが堪りません///// いらっとしても結局ターレスのこと大好きなんだよね〜、ってにやにやしてしまうくらいお話が進めば進むほどにカカロットが可愛くって可愛くって・・・////// 素直に頷くカカがツボでね、どうしようかと思いましたっ///// 主催二人の萌えツボを突きまくるタレカカ、ホントごちそうさまでしたっ////// [mokuji] [しおりを挟む] |