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 今日は目が覚めると自分のベッドの上だった。
 この間は目が覚めたら夢だかなんだか知らんがダンテと同じベッドにいて驚いたのは記憶に新しい。それも未来という設定でなおかつ恋人同士だというからおもしろい。そんなことがあったのだからちょっとしたことでは驚かない。そうは思っていたが……。
 
 いやいやおかしくね? だってさっきまで友達とカフェにいたよね? 一体いつ移動したのさ。
 心の中で毒づいた後さっと名無しは壁に掛けてあるカレンダーに目をやった。一応のためだ。人生は何があるかわからない。最近ダンテと関わって顕著にそう思う事が多くなった。指輪を嵌めたら赤い糸が見えて、相手を探してみたら一生関わらなさそうな男が「運命の相手」で、しかも今では交際を申し込まれていて、
 
 もっと有り得ないのがまさか自分がダンテを好きになるということだ。なんてことだ。有り得ない。信じられない。あんなに嫌っていたのに今では魅力的に見えるなんて。きっと私の目は腐ったんだ。もしくは節穴になったかの二択しかない。
 
 とまあ、今までの感想は置いといて名無しは現実を見つめることにした。
 名無しはカレンダーに印をつける人間ではないのでそのカレンダーを見ただけでは詳しくはわからない。分かった事は取りあえず「過去」だということだった。しかもそれほど名無しが生活していた時間軸から離れていない。せいぜい数か月前だという事ぐらいだ。……やっぱりタイムスリップは必須らしかった。
 後はちょうどあの骨董品屋で指輪を購入した月ということぐらいだ。とは言ってもアレを買う前なのか後なのかは皆目見当がつかなかったため名無しは立ち上がり指輪を探してみる。いつも置いてある場所にはなかった。これはつまり。
 
 
「……うーん」
 
 つまり何か面白いことが起こりそうな予感がする。例えば指輪を嵌める前にダンテと接触してみるとか。どんな反応をするのだろう。
 名無しが知っているダンテがダンテなだけに興味が沸いた。デレデレとしているダンテ以外に見たことがなかったため普通の反応を返すというか普段のダンテを見てみたい。
 
 
「こんにちは」
 という訳で名無しはデビルメイクライに訪れてみた。スラム街になんて一人で来たなんて知ったらダンテは怒るだろうが今はそんな事を言われる義理はないし親しい間柄ではないためまあ平気だろう。
 扉を開け正面を見るとデスクに足を乗せ深く椅子に腰かけるダンテがいた。彼は面倒そうに顔を挙げ名無しを視界に入れるとまた手元の雑誌に目を戻してしまう。
 
 
 てん、てん、てん、間。
 
 ……え〜と、これは、その、
 放置ですか?
 名無しが戸惑っているとダンテが声を掛けてきた。
 
「なんの用だよ」
「用? えっと、用とかは特にないんですが、少しお話したいと思って」
「帰りな」
 
 ぴしゃりと撥ね退けられて名無しは狼狽した。いくら指輪の効果がなくとも初対面の人間に対する反応ではない。確かにいきなり訪れて用はありません、会話を少々なんていったら普通はいい気がしないだろう。だがしかし、このダンテの反応はそれを念頭に置いておいても辛辣だ。
 そもそもダンテに冷たくあしらわれたことが無かった名無しは何か心に突き刺さるものがあった。本当に同一人物なのかと聞きたいぐらいだった。
 
「ナイな」
「え?」
 
 思わず聞き返すと気だるげだが冷たい色を映した瞳が名無しを見た。
 
「アンタ、俺に惚れたんだろ? 俺にはソノ気はないから諦めな」
 
 

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