「うぐぅ…」
生理的なものなのだろうか。
イオナの目尻から溢れる涙が痛々しく、指の力を緩めたくなる。さっきまでの良好な感情は影を潜め、情けない話、泣きたい気分だった。
それでも、彼女は『こうされたい』と望んでいる。今すぐ抱き締めたいのに、なんで自分は首なんて絞めているんだろうか…
そうこう考えているうちに、イヤイヤと首を左右に振り始めた彼女の涙に濡れた瞼が開かれた。
カッチリと視線が噛み合う。
扇情的で色っぽいイオナの、朦朧とした表情に息を呑み、慌てて首から手を離す。
それに対して、イオナは安堵したような笑みを浮かべ「ありがとう。」と唇だけでお礼を言うと──コクりと首を倒し意識を失った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日。
周囲の反応がやけにおかしかった。
「首に跡がつくほど絞めるなんて、信じらんない。」
「クソマリモ…、お前はイオナになんてことを。」
やけに刺々しいナミと、殺気どころではない、本気の殺意を向けてくるサンジ。
おまけにロビンまで「イオナがおかしいのかと思っていたけど、あなたも大概ね。ゾロ。」などと声をかけてくるものだから、本当に意味がわからない。
結局あの後、イオナが心配になりチョッパーに診察してもらった。服をちゃんと着せていたので、特にチョッパーはなにも思わなかったようなのだが。
なぜかこの3人が特に反応し、苛立ちのようなものをぶつけてくる。
「お前らは一体なにを…」
「何を?はぁ?アンタ、恋人同士だからってなにやってもいいと思ってんの?」
「イオナちゃんの身体はお前の性処理玩具じゃねぇよ!クソマリモ!」
「ゾロ。特殊な性癖は、恋人に向けるべきじゃないわ。そうした嗜好はそれにみあった風俗で吐き出さないと…」
各々の口から吐き出される、説教めいた言葉たち。
それの意味がわからずただ首を傾げるゾロは知らなかった。
世の中には、恋人の首を絞めた際の生理現象で強く締まる膣を堪能するという特殊な趣向をもった人間がいるということを。
「だからお前らは一体なにを…」
「いいから黙って、イオナ(ちゃん)と別れ(ろ!)なさい!!!」
この誤解を解くために、誕生日どころが11月を丸々潰してしまうだなんで、ゾロはこの時、まだ知るよしもなかった。
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