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「と、言うわけでして。ここでパーティやりますので。」
どや顔で言い切ったナミは、パンッとカウンターを叩く。
「合コンパーティなんて俺は…」
「サンジくんは20人分の美味しい料理をつくって、お店の外に貸しきりの看板をかけてくれたらそれでいいの。」
女性のワガママならばなんでも受け入れてしまう彼が、嫌がるような素振りをみせるとは驚いた。ただ、目を輝かせているナミが相手となれば断るのは無理な話だろう。
人事だと思っていたイオナはあまり話を聞いていなかった。シェイカーを振るサンジを眺め、洗われる食器の枚数を数え、ときどきグラスを口に寄せていただけ。
無意識ならがも「そう。」とか、「へえ」なんて言葉がタイミングよく溢れる自分を誉めてあげたい。
「あんたも参加よ、イオナ。」
「うん。…って、何が?」
「合コンパーティ。あんたの好きな、なんだっけ?アクアなんたらが趣味の奴が居るんですって。」
「ふーん。そうなんだ。」
あまり興味はなかった。捕食者になる気も、非食者になる気もない。
「なにその反応。喜びなさいって。」
「あぁー。うれしいな。うれしいな。」
「もういい、とにかく参加は確定ね。」
それでも、水槽の掃除をするために入れられた巻き貝のように、いつまでも客観視しているわけにはいかないことくらいわかっていた。
(同じ立ち位置の人がいればいいけど。)
イオナはぼんやりと考える。
もし恋愛をするのであれば、捕まえるでもなく、捕まえられるでもなく、対等な立場で生きられる相手がいいと。
ただナミはそんな彼女の考えをもったいないと笑う。
「女は追われてナンボでしょ?」
なのだそうな。
ナミの場合、自分の回りを群がり大騒ぎする男たちの中から、一番良い男を見極める。そして、その人を散々振り回した挙げ句、ポイッとしてしまう。
それだって彼女にとっては本気じゃないのだ。
そんなナミに自分の考え方を理解してもらおうだなんて、イオナは考えていなかった。
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合コンまでにはやることがたくさんあった。
「ネイルサロンなんだけど、2名以上で予約したら半額なの、どう?」
「うん。いいんじゃない?」
「あとまつげパーマも。マツエクは必要ないわよね。」
「そんな感じで。」
「ウィンターセール2着以上で30%…」
「はいはい、行くから。」
まるで何かを考える暇もない。めんどくさいやら忙しいやらで、うんうんと頷いてばかりだったけれど、仕上がりを確認するとやけに女の子らしくなっていてなんだか照れ臭かった。
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