Mission's | ナノ

最近のシャンクスの様子はおかしい。

イオナもまた接客業の立場でありながら、ぼんやりと立ち尽くしていた。 ここのところの、恋人のよそよそしさや、落ち着きの無さが気になって仕方ない。

「イオナさん、ため息ばかりついて、なんか変よ。大丈夫?」

「え?あぁ、はい。」

去年も一昨年もこの時期は仕事が忙しかったのだから、たいして連絡がないからという理由でなにか疑うのもおかしな話である。

でも、魔の三年に差し掛かろうかという日を目前にして、この状況ということもあり不安で胸が埋め尽くされていた。そんな不安は顔にばっちり出ているらしい。同僚はグイグイと押してくる。

「あぁ、わかった!彼氏のことだ。どうしたの?喧嘩?倦怠期?」

「そんなんじゃないの。」

「ほんとに?」

「そんなんじゃないけど…」

「けど?」

この好奇心だらけの視線は相談する相手に適していないことを示している。イオナは同僚を頭の先から足の先までをぼんやりと眺めた。

流行りが大好きな彼女は、まるで流行を追うかのごとく彼氏をコロコロと替える。昔どこかのパチンコ屋のCMであったかのような、『新台入れ換え』を平然とやってのけるのだ。

「特に話すようなことじゃないから。」

「えぇ…、小さなことでも話すべきよ。」

「小さなことはなかったことにするの。」

彼女に相談なんてすれば、それでなくても血行の悪くなっている関係に、余計にしこりが出来てしまう。イオナの燃えたぎる警戒心は、素晴らしいほどのガード力を生み出した。

しばらく押し問答は続いたものの、結局気がつけば、同僚の恋愛話。平日と言うのは、売り場も暇で仕方ない。売り上げ帳簿に目を通しながら、話し半分に耳を傾ける。

「でね、元カレが浮気しててさぁ…」

浮気。

その単語に異常なほど反応してしまった自分の間抜けさを、呪う。シャンクスがそんなことをする人な訳がない。

じゃあ、あの挙動不審はなんだ?

そんな自問自答を繰り返す。まるで意味のない無限ループは、ここのとこの化粧ノリの悪さと目の下の大きなクマに現れてしまっている気がする。

「イオナさんとこ、もおすぐ3年よね。相手にときめきを失う時期らしいから、ちゃんと繋ぎ止めておく作戦考えた方がいいわよ。」

「繋ぎ止める?」

「そそ。4年経つと今度は脳が癒し恋愛スイッチに切り替わるらしいの。だから、1年間を持ちこたえる術を…」

楽しげに話す彼女の言葉がどれだけ本当かはわからないものの、不安の方はしっかりと煽られていて、頭の中はメールの返信が少なくなったことへの心細さで埋め尽くされた。

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