ゾロ短編 | ナノ


seedy looking Oppai

日差しの眩しい昼下がり。

ナミ、ロビン、イオナの3人は甲板にあるパラソルの取り付けられた小さなテーブルを囲んでティータイムを楽しんでいた。

そんな様子を見て鼻の下を伸ばすのはもちろんこの男。

「ん〜。ナミさぁんもロビンちゃーんも素敵だなあ。豊満ボディがたまらないよ。上品な仕草のたびに揺れる胸…」

サンジは現在、女性陣が一番よく見える位置で、身体をくねらせるようにしながらハートをふんだんにこしらえている。

「あの柔らかさの中で窒息できるなら、俺は本望だ。オールブルーがどうしたって?そんなものは、ナミさぁんのおっぱいの前では無力に等しい。いや、彼女のおっぱいこそが、俺のオールブ…」

「いいから黙ってろ、この変態。」

独り言にしては声が大きすぎた。睡眠を邪魔されたゾロは、あからさまに不快感を示しながら寝起きの低い声で呻く。

ゆっくりと身体を起こした彼からサンジへと向けられたそれは、道端に落ちたゴミををみるような目だ。

しかし、そんなものにめげる訳がない。
野郎からの視線なんて、それそのものがゴミでしかないので、これっぽっちも気にならない。

それどころか─

「うるせぇッ、クソマリモ!ナミさぁんとロビンちゃぁんからもたらされる至福の時を、そのザラついた声で汚すなっ。サバかれてぇのかてめぇは!」

─声を荒げ、怒気を放ちながら逆ギレしてしまう始末。

そんな理不尽すぎる暴言にも、ゾロはもう慣れてしまっているのか全く動じることなく、落ち着いた調子で言葉を返す。

「俺が昼寝してる横で、わざわざ言うような事じゃねぇーだろ。だいたいあっこにはイオナもいんのに、なんで名前がでねぇんだよ。」

「は?なんだ、クソ剣士。お前の目は節穴か?よーく見てみろ!イオナちゃんにはおっぱいがねぇ。あれじゃあ、窒息死どころか、パフパフだって出来ねぇだろーが!俺はおっぱいがなきゃ…」

それは熱弁することなのか…。

少しばかり大きすぎるサンジの声を警戒しつつも、ゾロは呆れたように伸びをし、深く溜め息をついた。

「あぁ…。俺の目は節穴でかまわねぇけどよ、大事なクルーに対しててめぇはなんてエロい目を向けてんだ?だいたい、そんな言い方したらイオナがかわいそうだろーが。」

めんどくさそうに放たれた、「おっぱいになんて一ミリも興味ございません」といいたげな諌めの言葉。そのせいで、サンジのおっぱい愛はさらに燃え上がり、彼はよりいっそう声を張り上げた。

「じゃあ考えてみろ。お前は刀を持っていない剣士と戦えるってのか?戦えねぇーだろ?」

どんどん大きくなる、サンジの声。女性陣の視線を感じたゾロは、横目でそちらを確認し、捲し立てるように話す変態に手のひらをみせる。が、彼は興奮しているらしく、暴言とも取れる主観を吐き出すのをやめようとはしなかった。

「イオナちゃんみたいにおっぱいのないレディってのは、刀を持たねぇ剣士と同じなんだよ!考えろ!」

あぁ、名前まで出して言ってしまった…

ゾロは額に汗をにじませながら、あきれ混じりの口調で呟く。

「いや、お前が声のデカさを考えろ。」と。

それと同時。

カタンッ。と椅子の倒れる音が響く。

ゾロがそちらに視線を向けると、瞳にいっぱい涙を溜めた通称:刀を持たない剣士が立ち上がってた。ちらりとサンジに視線を向けると、彼もまたイオナの方をみている。

「おい。どーすんだ、おっぱいコック。」

「いやぁ、##NAME1##ちゃん、ごめんよ。そんな別に悪気は…」

「ドゥドゥ」と牛をなだめるかのように両手を前に出し言い訳を始めたサンジを睨んだまま、彼女の表情はぐちゃっと歪む。

本格的に不味いと思った時にはもう遅かった。イオナはビーチサンダルをパタパタいわせて走り去る。それと同時に、ナミの作り出した雲から落とされた雷によりその場に崩れ落ちるサンジ。

「ナミさんからの愛のお仕置き。ビビッときたのは、身体だけじゃ…」

ゴンッ

言葉の途中で鈍い音が響き渡る。

それはゾロの拳による強烈な1打によるもので、彼はしばらく立ち上がるきとができないたろう。

「ちっとは反省しろ、変態コック。」

芝生に転がったまま、強制的に昼寝をさせられているおっぱい信者にゾロは今日で何度目かの蔑んだ目をむけた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

勘弁してくれよな、まったく…。

空気の悪くなった甲板で昼寝を続ける気にもならず、ゾロは自分のベッドに仰向けに寝転がる。

おっぱい、おっぱいってなんなんだよ。

彼には巨乳の良さがわからない。かといって貧乳が良いというわけでもない。根本的におっぱいそのものに興味がなかった。

人それぞれフェチというのがあるのだから、いちいち巨乳への執着心を人前でさらけ出すなよ。

それが先ほどのゴタゴタに関する、彼の考え。

「まぁ、人前で声張れるほどメジャーなフェチだからこそ、さらけ出すのかも知れねぇけど。」

そんな意味深なことを呟きながら、ゆっくりと寝返りを打った。ドアに背を向けるようにして寝転んだ彼の耳に届くのは、穏やかな波の弾ける音。

それが子守唄になってくれればと目を瞑ったその時、ドアの向こうに人の気配を感じた。

終わったと思っていたゴタゴタは、どうやらまだ終わっていなかったらしい。

小さくため息をついて、上半身を起こす。

それと同時に、コンコンッとドアをノックする音。その気配で相手が誰かはわかっていたが、わざと誰だ?と訪ねる。

一枚の板の向こうで、息を飲む音が聞こえた気がした。そこまで緊張しなくてもと思うが、さっきあれほど(不本意にではあるが)中傷された後だ、仕方ないだろう。

「あの、ゾロ…?私。」

「おう、入れよ。」

てっきり怒っているのだろうと思っていたけれど、その予想は見事にハズれで、イオナは今にも泣きそうな声をしていた。

「あんな変態コックの言葉でなんでそんなに落ち込んでんだよ。」

ベッドの半分をあけ、そこに座るように促しながら言葉をかける。彼女は視線を伏せたまま、プッと頬を膨らませてそこにペタンと座り込んだ。

「あれは完全にあいつの趣味の問題であって、別に世界の男の意見って訳じゃねぇだろ。」

セクハラにならないように、慎重に言葉を選びながら慰めるのはそれなりに神経を使う。傷つけるのは一瞬だというのに、それをフォローするのは随分と骨が折れる。

うつむいたまま枕を抱き締め、口を尖らせる様子は拗ねた子供のようだった。それでいて、なにかこうそそるものがある。

無言になるのは気まずいが、これ以上なにを伝えればいいのかわからない。お手上げ寸前のゾロはボリボリと腹の辺りを掻いた。

その時。

「じゃあ、ゾロは刀のない剣士と戦えるの?」

イオナはムッとした表情のまま言い放つ。
尊厳を傷つけられたようなものなのだから、怒っていても仕方はないだろう。ただ、ゾロ的にはおっぱいより興奮を覚える箇所がある。

彼女の『そこ』がより優れていることに、今日、このやりとりのうちで気がついてしまっていた。

「だから、その比喩がおかしいんだよ。刀が、その、おっ、お、胸とは限らねぇだろ?」

「でも…」

「あぁー。納得いかねぇなら、胸が刀って例えでもいいわ。ただ胸=刀じゃねぇ。長所=刀と考えろ。」

同世代の女の子の前で、おっぱいという単語を口にするのは大概恥ずかしい。

もしかすると、サンジはその単語にするほどに込み上げる羞恥心すらも楽しんでいるのかもしれない。

こんなことをついうっかり考えてしまい、目眩がした。

それでもゾロはなんとか適切なアドバイスをしようと必死に脳髄に働きかけた。

「剣士ってのは一刀流の奴だって、刀を一本しか持ってねぇ訳じゃねぇ。自分の持ってる中でも一番切れるヤツを構えてんだよ。ここまでわかるか?」

「う、うん…」

予想だにしていなかったその哲学的な意見に、涙の引いた##NAME1##はポカンとした表情を浮かべカクカクと頷いている。それを確認したゾロは続ける。

「それにイオナの胸が刀の役割を果たせてねぇ訳じゃねぇ。ナミやロビンのはあれだ、ありゃ妖刀だ。で、お前のお胸は…」

いやいや、なんで俺こんな胸について語ってんだ。あのクソコックより変態じゃねぇか…。

妙な汗が額に浮かぶ。

しかし、イオナの瞳は真剣そのもの。

「私の、私のおっぱいはなんなの?」

まるで恵みの雨を求める砂漠地帯の住民のような眼差しが、おっぱい評論家となったゾロに向けられる。

彼は小さく深呼吸をした後、一段と声を低くして答えた。

「た、短刀だ。」

「その心は…」

「使い手次第では妖刀を持った奴にも負けねぇ。」

あまり上手いことを言えた訳ではないが、イオナの表情はパッと華やいだ。

「ねぇ、ゾロ!使い方ってどうすれば…」

「い、いや、それは俺に聞くな!」

ゾロの手は彼の意思に反して、彼女の手により膨らみのない胸元へと導かれる。ないないと言うわりには、浅い茶碗くらいの厚みが存在していた。

慌てて手を引っ込めたゾロは、頭をワシャワシャと掻きながら視線を泳がせる。しかし、##NAME1##は諦めきれない。

「で、でも…」

「だいたい俺はおっぱいに関心も執着もねぇんだ。俺が好きなのは…」

「好きなのは?」

イオナは首を傾げ、ゾロの目を覗きこむ。その清んだ瞳に負けてしまった。

「絶対、人に言うなよ…」

「うん。」

こうして二人は秘密を共有することとなり…。

ーーーーーーーーーーーー

それから数日後。

キッチンに向かったゾロは、期待と喜びにより弾む心を隠しきれない。

「よう!エロコック。」

「なんだクソマリモ。今日はやけに機嫌がいいな。」

「まぁな。」

妙にテンションの高い彼にサンジは首を捻る。

それもそのはず。

おっぱい評論家となったゾロは悩める貧乳娘を励ますことにより、とあるサービスを受けられる権利を手にいれていたのだから。

「そういやここ数日、##NAME1##ちゃんとくっついてなにやってんだ?ナミすわぁーんが気にかけてたぞ。」

「黙れ。もとはといえば、てめぇが原因だろうが。」

ゾロの言葉にサンジは鍋をかき混ぜていた手をピタッと止める。

刹那、ゾロの鼻先を黒い影が掠めた。

「てめぇ、まさかイオナちゃんのあのでき損ないおっぱいでお楽しみってんじゃないだろーな!」

タンッと床を蹴り、跳ね下がって距離を取ったゾロに対し、サンジはくるりと半回転しながら回し蹴りを繰り出した。

「でき損ないって…。それ酷くねぇか。」

それでもゾロは刀に手を添えるだけで、まったくもってその挑発に乗る気はない。回し蹴りの反動を生かし繰り出された飛び蹴りについても、彼はしゃがむことでかわしすぐさま距離を取った。

「膨らんでねぇおっぱいはでき損ないだ!レディのおっぱいは陥没していようが、黒ずんでいようがボリュームが命だ!しかし、イオナちゃんに関しては別だ…」

サンジの言葉にゾロは棒立ちになり、「は?」と気のない声を漏らす。

さんざん傷つけておいて、今さらなんて都合のいい変態だ。と言いたげなゾロの視線を浴びてもなお、サンジはその口を閉じようとはしない。

「恥も承知で聞かせてくれ。どうだった?いや、お前のくだらねぇ、感想はいい。今度俺に覗かせて…」

やべぇまじでコイツ最低だ。

つっーか、ほんもんのバカだ…。

「いや、俺らそんな関係じゃねぇし。」

繰り出される蹴りを難なく避けながら、冷蔵庫を開けソフトクリームとミネラルウォーターを取り出す。

「なんだ?お前、そんなもん食うのか?」

「いや、俺じゃねぇけど。つっーか、蹴るな。勘弁してくれ。」

「まさかこれからイオナちゃんとコソコソちちくりあおうってんじゃ…」

「だから脚を止めろ!言っとくが俺はあいつに手ぇ出したりしてねぇよ!」

口でどんだけ挽回しようとも、彼は信じることなく脚を動かし続ける。ゾロは半分苛立ちながらも、冷静さを失わないように距離を取り続け、部屋を抜け出した。

ーーーーーーーーーーーーー

なんとか男部屋に戻ったゾロ。そこには当たり前のように彼のベッドに寝転がる、下着姿の##NAME1##の姿があった。

「ほら、持ってきたぞ。」

「キャッ。投げないでよ、もう…」

両手でソフトクリームを受け取った彼女は、手慣れた手つきでその蓋を開ける。ゾロはいそいそと彼女の正面に胡座をかき、彼女へ興奮と期待のこもる眼差しを向けた。

「すっごい視線感じる…。」

「いいから早く食えよ。」

「急がなくても逃げないってば。」

落ち着かない様子のゾロはミネラルウォーターに口をつける。そんな彼のせっかちさに愛おしさを覚えながら、イオナは半開きの口から伸びた舌先をペロりと動かした。

「やべぇな、その表情…。すげぇ、かわいい。ほら、もっとしっかり舐めろよ。」

惜しげもなく賛美の声を彼は漏らす。

左右から覗きこんだり、上から見下ろしたり。

ゾロは落ち着きなく彼女の舌先の動きを観察しながら、子供みたいに瞳を輝かせる。イオナもまたその視線が心地いいのか、無意識に頬を赤らめ色っぽい表情を浮かべていた。

ぺちゃぺちゃと水の遊ぶ音が響き、二人分の荒い息づかいが重なる。

「んっ?こう?」

「あぁ。まじで、やべぇ…」

「そんな声出さないでよ、ゾロってば。」

「無駄口叩いてねぇで奥までくわえろ。」

「んっ、ダメ…。苦ひ…」

「垂らすなよ、ベッド汚れるだろ…」

「んっ、ゾロ…。」

「あぁ…、ばか。そんな目でこっちみんなよ。」

恍惚としたイオナの表情にゾロが照れて、目を手のひらで覆っていたその時。

たのしげな二人の声に聞き耳を立て、ドア越しに燃え上がる一人の変態がいた。

『ヒャッ、そんなとこダメだよ。』

『ダメかどうかは俺が決めるっつてんだろ。ったく、ほんとエロいな。』

エロい…だと?

エロさはおっぱいの大きさに比例しているという、俺的データはまさか間違えているのか。だとしたら、だとしたら、俺はこの目でその事実を確認しなくては…。

彼なまた勝手な思想に囚われながら、ゆっくりとドアノブを回す。カチャッとわずかに漏れる音が命取りであるこの状況に、ありえないほどの興奮を覚えていたのは言うまでもない。

そして彼の目に映ったものとは…。

下着姿でゾロが手に持つソフトクリームを、必死に舐め回すイオナの姿。

「もう疲れた…。」

「いいからもうちょい舐めろって。」

「んっ、押しちゃダメ。鼻に入る。」

「んじゃ、早く舌動かせよ。」

まるでたのしそうなその様子に、サンジは無言でドアを閉める。なにかよくわからないけれど、見てはいけないものを見た気がしたからだ。

ソフトクリームを食べおわり、口の周りについたクリームを舌で舐めとるイオナの姿に真剣な眼差しを向けるゾロはずいぶんと楽しそうだ。

「ねぇ。ゾロ、キスくらいしようよ。」

「おい!よーく、考えろ。キスなんかしたら、死角になってなんにも見えねぇだろーが。」

「いや、でもさぁ…」

貧乳コンプレックスを救った、おっぱい評論家は重度の隠れ舌&唇フェチだった。こうして見ているだけで、おっぱい圧迫死以上の興奮を覚えられるのだから健全と言えば健全なのかもしれない。

ただずっと性的な目を向けられているのに、キスすらしてもらえないイオナが悶々としない訳がなく─。

「ほら次はジャムな。」

「甘いものばっかりじゃ太っちゃうよ…」

どこかピントのずれたイオナの突っ込みと、指を舐められるくすぐったさに笑顔を見せるゾロが恋に落ちるのはきっとまたずっと先のお話。


END


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