いつもの朝に | ナノ


3  





「甲斐さん、今日は何時?」
「七時くらい」
「はぁい」
「買ってくるもんは?」
「うーん……素麺」
「ん」

 ごちそうさまをして、シンクに皿を置く。洗い物は後でめぐむがしてくれるから、揃って弁当を作る。ほとんど昨晩の残りと、この時間に炊けるようタイマーをかけていた、炊きたてのご飯。隙間を埋めるように、菜園で採れたプチトマトを入れる。

「めぐむ、今日は何するの」
「佐久間さんと苺のジャム作るって約束した」
「そ」
「あと、曽我さんが、畑を見てくれって」

 きゅ、とめぐむが弁当を包んでくれた。
 敷きっぱなしだった布団を片づける。めぐむは力がなくて布団を持ち上げられないから畳む役目。俺が布団を押し入れに仕舞う。終わったら支度に入る。俺は車で三十分ほどの町の中心地で働いている。一応、正社員としてやっているが、半年前よりも収入はぐっと減った。けれど、ほぼ自給自足の生活をしているお陰でそう出費はない。今住んでいる家も、空き家を引き受けたお陰で格安で住むことができている。金銭的な豊かさは劣るかもしれないが、精神的な豊かさはぐんと上がった。

「いってらっしゃぁい」

 中古車に乗り込むと、いつもめぐむが玄関で手を振ってくれる。屈託のない笑顔は眩しくて、いつも俺は、よし、と力が湧く。
 さぁ、今日も頑張ろう。エンジンがかかる。


prev / next

[ list top ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -