それでも優しい恋をする | ナノ


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「なべちゃんはさぁ、何で先生になったの」
「俺か?俺は単純に……まぁ、子どもが好きだったし、スポーツに携わりたかっていうのもあるし。高校の時の恩師に出会ったせいもあるかな」
「俺も先生になろうかなぁ。なべちゃんという恩師もいるし」
「本気で思ってないだろ」

 ぐしゃ、となべちゃんが大きく無骨な手で俊太の頭を撫でた。

「まずはその髪をどうにかしろ」
「えっ、俺のトレードマーク」
「形から入るのも大事だろ。そろそろ、落ち着け」

 将来、か。柄にもなく真面目なことを考える。
 午後の授業はなんとなく、ちゃんとうけた。けれどやっぱりぼんやりとしかついていけなかった。

「昼、なべちゃんに呼ばれてなかった?」

 今日はまたなんとなく、真っすぐ家に帰ると決めていた。駅まで同じ方向のけんちゃんと肩を並べながら、まだ日の高い空を見上げた。

「進路のこと」
「げぇ」
「あと、髪黒くしろって」
「ぶっは、まじか!」
「けんちゃんは文理決めてんの」

 ポケットに手を突っ込みながら、中のスマホを指で撫でた。さっき、あずからメールが来ていた。まだ返事はしていなかった。なんとなく。

「俺は文系。経済学部行くから」
「えっ、大学も決めてんの?」
「F大学。近いし、あそこの経済学部、女の子多いんだよな〜」

 この前ゆりにアプローチしていたと思えば、この軽さである。けんちゃんらしいなと苦笑しつつも、俊太は焦りを感じた。
 動機は不純にしろ、けんちゃんも将来のことを考えていた。

「あー、くそ、めんどくせ……」

 いつの間にか、駅に着いていた。電車の方向が違うけんちゃんとはホームで別れ、改札の前で南口に続く階段を見つめた。
 今日もあずは、不器用にも一生懸命に、働いているんだろう。
 会いたいな、と思った。


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