気付いた頃には夜も遅くなっていた。
『ばいばい』
「ありがとねー!気をつけてー」
玄関の前で手を振る姉弟に手を振り返しながら、俊太と悠平は駅の高架に向かって歩いた。
「何で俺お前と一緒に帰ってんの」
「俺んち、北口なんで」
「ふぅん」
満腹になったお腹を思わず摩った。ゆりの料理は美味しかったが、遠慮なく多かった。悠平もだいぶ食べていたが、そもそもゆりとあずがあまり食べる方ではなかったのだ。お陰で、余り物をお土産に持たされた。
「…………」
「…………」
沈黙に気まずくなる。あずの前では威勢よく言い合いをしていても、いざ二人きりになると態度に困る。
金髪でちゃらちゃらとした様子の俊太と、頭一つ分背は低いけれど日本男児という言葉をそのまま具現化させたような悠平と、並ぶとアンバランスさが際立つようだった。
「……先輩、は」
「あ?」
「その、あずのこと、好きなんすか」
直球。あまり恋事には慣れていないのか、言った悠平本人の耳が少し赤いのがわかった。勢いはあるけど初な方らしい。
「好きっつーか」
「…………」
「押し倒したけど」
「おしっ……!?」
悠平は顔を真っ赤にさせて掴みかかろうとせん勢いで顔を上げ、俊太を信じられないという風な目で責めた。
「おし、えっ、あんた、やっぱ最低だなっ」
「いや、何もしてねぇよ」
「信じられるかっ」
「本当だって」
悠平がわなわなと肩を震わせているので、思ったよりも挑発に乗りやすいやつなんだなぁと関心しつつ、俊太は足を止めた。高架を昇る階段の手前で脇に寄り、電灯で薄暗い中でふむ、と逡巡した。
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