5
side.満月
飲みかけのマグカップを、テーブルに置いた。
「俺、帰るね」
「え」
ぱっと振り向いた恭平の顔を見ないようにして、俺は立ち上がった。
一方的な想いだったのかと、悲しくなる。
俺と何日会えなくても、恭平はなんともなくて、普通に生活してて、
「……あっ、!」
後ろに腕をひかれてバランスを崩し、尻餅をつくように座り込んだ。
背中に、恭平の鼓動を感じた。
「きょうへ、」
「ごめん、冗談」
「……」
「帰んないで」
後ろから抱き締められていた。
首に回された腕に、そっと触れた。
やわやわと、髪を撫でられる。
「最近、会いに行けなくて、ごめん」
「………」
「会いたかった」
「っ………」
涙が出そうになる。
腕の拘束がなくなったかと思うと、横から頬に触れられて、重ねるだけのキスをされた。
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