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side.満月



飲み物を準備したのか、満月が近寄ってきた。
俺に気を使ってか、人一人分くらい間をあけて隣にぺたりと座った。
コーヒーのいい匂いがする。

キーボードを叩く音と、コーヒーを啜る音。
しんとした部屋に、それだけ。
沈黙を破ったのは満月だった。



「……ねぇ」
「んー?」
「背中、借りていい?」



どういう意味だ?と思いつつ了承すると、満月は俺の後に回った。
胡坐をかいている俺の背中に、体育座りしてマグカップを両手で包む満月が背中を預けてくる。

背中、温かい。
見えないように苦笑して、作業を続けた。

しばらくすると、背中に感じる満月が揺らいでいるのに気付いた。



「眠い?」
「……くない、」
「ならいいけど……寝たかったら早く寝ろよ、ベッド使っていいし」
「……いい」



少しむっとしたような声音で、返されてしまった。



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