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side.満月



最近、恭平がうちに来ない。

年度始まりの忙しさは同じ教師であるわけだし、充分に理解している。
しかも恭平は担任だ。

同じ学校で働く教師同士とはいえ、化学教師と保健医とでは活動場所が全然違う。
以前は昼休みに奈津の様子見もかねて保健室に顔を出していたけれど、今は少なくなっていた。
だから本当に、顔を合わせていないわけで。



「……はぁ」



静かな夜に、息が漏れた。
仕事と恋人どっちが大事なんだと、天秤にかけられない物を駄々こねるほど、俺は子どもじゃない。

ただ、やっぱり、



(なんだかなあ……)



淋しいのは、事実で。

ちゃんと飯食ってるかなとか、働きすぎて体調崩してないかなとか、色々気になる。
恋人ならば素直に連絡できるようだが、しかしお互い社会人という以上、余計なお節介は逆に邪魔になるんじゃないかと思えて。



「……20時、か」



ちらりと時計を見る。
もう恭平は、寝てしまっただろうか。



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