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僕は静かに夜を待つ。

ご飯はいらないと電話が入ったから、料理も片付けもなくて少し楽な日。
お風呂も沸かしてあるし、部屋の掃除も済んだ。
あとは、待つだけ。



「……!」



こつり、と足音が聞こえた。
数回鳴ったそれはドアの前で止まり、がちゃりとドアノブが動く。
ソファに体育座りしていた僕はぱっと立ち上がり、ドアへと向かう。



「……ただいま、奈津」
「……おかえりなさい」



笑って、頭を撫でられた。
僕はほっとした。
いつもこの瞬間が一番緊張する。
機嫌が悪いときは、すぐに―――殴られるから。

荷物を受け取り、着替えるお父さんの手伝いをする。
上着をハンガーに掛けようとしたとき、



「……電話か」



お父さんの携帯電話が鳴った。
少し離れてベランダに行ったお父さんを横目に見て、僕は手を動かす。



「……もしもし。……え?書類?」



コーヒーを準備しようと、台所へ向かう。



「あそこの棚に……無くした?」



声が冷えて、びくりとした。



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