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「俺持ってたら見にくいし、真ん中の奈津が教科書持っててよ。はい」
「っ、あ、う」
「奈津、私にも見せてください」



僕が教科書を開いて、2人が中を覗き込む。

皆川先生が、黒板に文字を書いていく。

下らない会話。
怒られて。
紙に黒板の字写して。
問題を解いて。
質問をして。



(あ、)



そっか。



(普通の、高校生、だ)



チャイムが鳴る。



「よっしゃ、授業終わった!奈津、帰ろ」
「あ、っうん、」
「では私も」
「日下部は補習な」
「えー……」
「ざんねーん。行こ!」



うなだれる満月先生と、笑って手を振る皆川先生を後にして、僕らは帰った。



少しだけ、世界が、きらきらして見えた。



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