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side.航



「うーん、出ませんねえ」



満月先生が耳に携帯をあてたまま、ぼんやりと呟いた。



「出ない…?」
「寝ているんじゃないですかねえ」
「先生、そんな暢気に……何かあったら、」
「大丈夫ですよ」



絶対的な安心の声。
俺は眉をひそめて、再びデスクで仕事を始めた満月先生を見つめた。



「奈津が何か起こすほど錯乱していたら、まともなメールなんてできません。奈津が何かを考えて、このような行動をしていると考えた方が懸命です」
「………」
「そんな心配そうな顔しない」



くす、と笑われた。
心配なのはしょうがない。

奈津は儚くて、脆くて。
いつの間にか崩れ落ちて、消えていきそうで。
たまに、怖くなる。

大事だから、しっかり捕まえていたくて。
でもあまりに弱いから、捕まえることで傷つきそうで。



「うー……」
「大丈夫ですよ。君が思ってる以上に、奈津は弱くない」



ね、と諭される。

心配だけど、心配するだけじゃ駄目なのかなとも思う。
いつか奈津が自分の力で生きていけるよう、支えるべきなのかもしれない。



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