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「………」
そっとドアに耳を傾けて、航の足音が離れていくのを確かめた。
途端に息がついて、僕はふらふらとソファに寄った。
傾れ込むように横になって、また一息。
身体が熱い。
熱が上がったようだった。
(ええと、)
熱が出たときは、と満月先生の処置を思い出す。
寮部屋に備え付けてある薬箱からそれらしいものを取出し、水で飲み干した。
あとは、着替えたりとか、寝たりとかしてたら、いつも治ってる。
氷枕とか、おかゆとか、色々あるけれど、足元がふらふらした。
ローテーブルに足をぶつけて、鈍い痛みが走った。
(……寝よ)
身体が薬のせいか眠気を訴える。
ふらりとソファに横たわり、ちゃんとベッドに、と思うがもう遅い。
身体のだるさが手伝って、ベッドまでも動けない。
(……いいや、)
眠れればどこででも。
僕は目を閉じた。
研ぎ澄まされた聴覚が、ベッドに置きっぱなしの携帯が鳴っていることを知覚した。
航かな、満月先生かな。
出ないと、心配されるかな。
でも今でたら、風邪ひいてるってバレる。
またかって思われて、仕方ないって介抱される。
僕は何もできない子になる。
(一人で大丈夫だ、)
丸まって、聴覚を遮断した。
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