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「なーつ」
「……こう」
「帰ろ?」
「……ん、」



いつものように、航は僕を迎えにきてくれる。
保健室から出られない僕は、航の手にひかれれば、出ることができる。

それはまるで、あの家から出してくれた、優しい警察官の人みたいに。
僕はようやく、息ができる。



「さようなら、奈津」
「さようなら、先生」



ふわりと笑う先生。
僕の居場所を作ってくれた人。
手を振って、別れた。



僕はいつも怯えている。
いつまでこの幸せが続くのか。

航は言う。
ずっと一緒にいる、と。
僕は信じる。
その言葉を真っ直ぐに。

でも、怖いんだ。
人の気持ちはかわりゆく。

もしも航が、僕以外の人を選んだとき、僕は航を取り返す術を持っていない。



(だから、)



いってしまわないよう、必死に手を掴む。



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