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夕暮れ。
僕は航に手をひかれ、静かな教室の前を通る。

整然と机が並んでいる。
黒板に夕陽が反射して、眩しかった。
ベランダ側のグラウンドには、部活動をしている生徒がちらほら。



「奈津?」
「……なんでも、ない」



教室を見ていたら、いつの間にか足を止めていた。



「……ね、航」
「ん?」
「僕も、いつか……『普通の高校生』に、なれるのかな……?」



僕の手を繋ぐ力が、少しだけ強くなった。



「普通の高校生ってのが、よくわかんないけど」



くしゃりと、頭を撫でられる。



「別にならなくてもいいんじゃない?奈津はもう『普通』なんだし」
「!」



100%の、僕の存在の、肯定。

でも、僕は少しでも。



(航と一緒に、『高校生活』をやってみたいんだ)



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