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side.航



俺は奈津に大切にしすぎて、奈津の意思を汲み取ってやれてなかったのかもしれない。

こんなに、俺のために一生懸命に。
自分のことで必死だったあの頃とは違う。
少しずつ、前に進んでる。



「ごめん……でも、奈津が頼りないなんて思ったこと、一度もないよ」



抱き締めようと腕を伸ばすと、それを掴まれた。
あれ、と思った頃には、奈津に抱き締められていた。



「な、つ」



奈津が膝だちして、俺の頭を抱えるようにしている。
拙く手が髪を撫でて、あぁ気持ちいいなと思った。
俺の目の前には奈津の心臓の音。

心なしか、速い。



「ごめ、僕……こんなことしか、できない、」
「んーん、気持ちい」



奈津の細い腰に腕を回して、俺は口を開いた。

生徒会で、大きな失敗をしてしまって。
他のメンバーのフォローでなんとかなったんだけど、自己嫌悪でいっぱいで。
有り難さと申し訳なさと、自分の不甲斐なさに、落ち込んだ。



「いっぱい、迷惑かけちゃったんだよなー……」
「そ、だったんだ」



俺が話す間、奈津はずっと、俺を抱き締めてくれていた。
大丈夫だよ、というように、時折頭を撫でられて。



「ん、でも解決したから、大丈夫」
「そ、か……」
「話、聞いてくれてありがと」



言うと奈津の身体が離れて、目があった。
頬を撫でられて、それが気持ちよくて、思わず目を瞑ってしまった。
この子の傍は、安心する。



「っ……ん、?」



唇に、柔らかい感触。
目を開けると、真っ赤な顔の奈津がいた。



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