2
放課後、保健室のドアが開く。
「奈津、帰ろー」
「うん、」
いつも航が迎えに来て、一緒に帰る。
いつもと同じ。
でも今日は、何かが違う。
「あ、そだ、親からお菓子送られてきてさ」
食べよ、と航がにこりと笑った。
航の部屋。
変わらぬ部屋。
違うのはただ、
「ど、したの……?」
「え?」
「へん、元気ない……」
笑ってるけど、笑ってない。
なんとなく、わかってしまって。
「………駄目だなぁ、俺」
苦笑して、航が頭を掻いた。
「ごめん、奈津にはわかっちゃったか」
「なに、が」
「んーん、ちょっと色々あっただけだから」
気にしないで、と笑った顔は、やっぱりいつもと違う。
僕は咄嗟に、航の手を握った。
「っえ、なに」
「僕には、言えない、こと?」
「あ、いや、疚しいことしてるとかじゃなくて、心配かけたくなくてさ」
「やだ、僕も、同じだもん……」
航が僕を心配してくれるように。
僕も航が心配になる。
航が僕を救ってくれるように。
僕も航を救ってあげたい。
「言って、僕、航が好き……だから」
「奈津、」
「僕ばっかりだよ、僕は航と、つきあってるのに……僕ばっかり心配かけて、っ頼りない、のはわかってるっ……けど」
僕も、同じ位置に立ちたいんだ。
隣にいられる資格が欲しい。
前へ top 次へ