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放課後、保健室のドアが開く。



「奈津、帰ろー」
「うん、」



いつも航が迎えに来て、一緒に帰る。
いつもと同じ。
でも今日は、何かが違う。



「あ、そだ、親からお菓子送られてきてさ」



食べよ、と航がにこりと笑った。

航の部屋。
変わらぬ部屋。
違うのはただ、



「ど、したの……?」
「え?」
「へん、元気ない……」



笑ってるけど、笑ってない。
なんとなく、わかってしまって。



「………駄目だなぁ、俺」



苦笑して、航が頭を掻いた。



「ごめん、奈津にはわかっちゃったか」
「なに、が」
「んーん、ちょっと色々あっただけだから」



気にしないで、と笑った顔は、やっぱりいつもと違う。
僕は咄嗟に、航の手を握った。



「っえ、なに」
「僕には、言えない、こと?」
「あ、いや、疚しいことしてるとかじゃなくて、心配かけたくなくてさ」
「やだ、僕も、同じだもん……」



航が僕を心配してくれるように。
僕も航が心配になる。

航が僕を救ってくれるように。
僕も航を救ってあげたい。



「言って、僕、航が好き……だから」
「奈津、」
「僕ばっかりだよ、僕は航と、つきあってるのに……僕ばっかり心配かけて、っ頼りない、のはわかってるっ……けど」



僕も、同じ位置に立ちたいんだ。
隣にいられる資格が欲しい。



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