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side.葵
「……葵、この人が?」
圭が言おうとしていることは、すぐにわかった。
けれど僕は肯定することも、否定することもできないまま、俯いていた。
朝倉さんの、僕の腕を掴む力が、強い。
「離してあげてください」
圭が朝倉さんの手を掴んで、凛とした声で言った。
「怖がってる」
「怖がる?葵が僕に?」
「葵のこと、よくわからないですけど、怒ってるんでしょう?」
すると、朝倉さんは可笑しそうに笑った。
「いえ、別に?」
ぞく、と背筋が凍る。
気が緩んだ瞬間、朝倉さんに腕を引かれた。
肩を抱いて、歩き出す。
「……そうだ、君の名前を聞いていい?葵と仲良くしてくれてるみたいだし」
「と……外村、外村圭、です」
「外村くん、ね」
朝倉さんの爪が、僕の腕に食い込んだ。
「これからも、よろしくね?」
優しい、優しい、笑顔。
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