3
side.葵
「ふんふん、その時から友達が冷たいと」
「まぁ、そんなとこ……」
ご飯を食べて、近くのお店をぶらぶらしてたら、夜遅くになってしまった。
圭と過ごす時間は楽しくって、ついつい、朝倉さんのことを喋ってしまった。
……もちろん、身体の関係があるとか、脅されてるとかは言ってないけど。
「うーん、なんだろなー」
「ん……」
「でも、友達の部屋で電話しただけでしょ?別にそんな怒るようなことじゃないと思うけど」
「う……」
帰り道の、相談。
圭の家は俺の家が通り道らしくて、結果的に一緒に帰ってる。
暗い道に、声が静かに響く。
いつの間にか、僕の家は目の前だった。
「ほーら、怖い顔しない!」
「むうっ!」
むにゅ、とまた頬を引っ張られる。
圭は僕と目をあわせて、にこ、と笑ってくれた。
大丈夫だよ、と言ってくれてるみたいに。
「………葵」
声が、響く。
「あ、さくら、さん」
なんで、ここに。
朝倉さんは、僕の家の壁から背中を離した。
もしかして、ずっと待ち伏せしてたんだろうか。
一瞬だけ怖い顔した朝倉さんが、圭を視界にとらえて、優しく笑った。
「葵のお友達?」
「あ……は、はい」
「そう。送ってくれたんだね、ありがとう」
朝倉さんがつかつかと寄ってきて、僕の腕を掴んだ。
けれど、僕は。
咄嗟に圭の服の裾を掴んでしまって。
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