2
side.葵
「授業終わったよ、」
「あ……」
圭だった。
なに考え込んだ顔してんの、と頭をぐしゃぐしゃ掻き回された。
圭は、僕とは全然違う。
いつも友達に囲まれて、楽しそうに笑ってる。
普通にしてたらクールそうな顔つきなのに、笑うとくしゃって幼い顔になる。
いいな、羨ましいな、と思う。
「次、何限?」
「あ……もう終わり」
「まじ?俺もこれで終わりだからさ、飯でも食っていかね?」
にこ、と無邪気な笑顔。
僕には眩しすぎる。
同時に、そんな笑顔を向けてくれることに、嬉しくなった。
「おすすめの店あんの。このあと用事ある?」
「な、い……」
今日は朝倉さん、遅番の日だ。
この日だけは、僕は解放される。
ゆっくり眠ることが出来るんだ。
「ん、行く。行きたい」
「っしゃ決まりー!」
圭があんまり嬉しそうに笑うもんだから、
「あ、笑った」
「え」
「綺麗な顔して笑うんだな」
「なっ……!」
「いつも仏頂面だからさ」
笑ってたがいいよ、と頬を両側に引っ張られる。
「いひゃい、」
「にこにこしてろー」
そういえば、自然と笑ったの。
久しぶりかも、しれない。
前へ top 次へ