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side.葵
最近、朝倉さんが、怖い。
僕に対して怖いのはいつもだけど、こう、いつにも増して、という感じ。
苛々しているのが、伝わってくる。
それは僕のせいなのか、他に理由があるのかはわからない。
なんにせよ、僕は朝倉さんに嫌われている。
変わらない事実。
(なんで、かなぁ)
あんなに余裕がない朝倉さん、初めてだった。
いつものように朝倉さんに呼ばれて、こっぴどく抱かれて。
朝倉さんがシャワーを浴びてるときに目を覚まして、ああ、電話がきたんだっけ。
友達がいない僕の、唯一の友達。
この前の実習で班が一緒になって、それから仲良くなった、圭。
僕は圭だけは離れないように、必死なんだ。
いつだって僕に関わった人は、僕から離れていく。
僕が何か悪いことしたのかもしれない、気に触るようなことしたのかもしれない。
だから圭にそんな思いをさせないように、気を付けようって。
(電話だ、電話がいけなかったんだな)
朝倉さんの家で、勝手に電話してたから。
シャワーを浴び終わったのも気付かないくらいに、盛り上がってしまったから。
うるさくしてしまったのが、駄目だったんだと思う。
(……気を付けよ)
マナーをわきまえろ自分、と自己反省をした。
いつになったら朝倉さんの機嫌が直ってくれるんだろうと思うと、ため息がついた。
機嫌が悪いと、身体中痛め付けられるから。
「……いて、」
後ろから、頭を小突かれた。
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