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一緒に飯食って、寝て。
何気ない会話や行動に、まだはっとさせられることがあって。
綾と一緒に住み始めて十分経っているというのに、何度も新しい顔を見つける。
「あっつ、」
風呂からあがって、濡れた髪を適当にタオルで拭いていた。
リビングはやけに静かだったが、綾は先に風呂に入っていたし、寝こけてしまったのかと思った。
キッチンに直行して、冷蔵庫を開ける。
たしか、買い置きの酒が、
「………あれ」
ない。
途端、後ろに軽い衝撃。
え、と戸惑っていると、ふわりと風呂上がりのいい匂いが鼻についた。
「りょおー……」
「なっ、」
ぎゅうっと後ろから抱きついてくる、綾。
上目遣いは身長差、けれど今となってはわざとかと思えるほど。
にこにこと笑いながら、綾はそこにいた。
「ふふ、りょうー」
「………おま、もしかして」
「ほえー?」
ずるずると綾を引っ張りながらリビングをみると、床に散乱する缶。
「ジュースね、おいしかったのー」
「……あのなぁ」
チューハイだしジュースに見えなくもない、が。
「りょうも、飲もっ」
「飲もうって全部お前がっ、ん」
ぐっと首に腕を回されひっぱられて、屈んだ隙にキスされた。
「おいしー?」
……相当、酔ってる。
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